扉 第一部 第二部 第三部 第四部 終章 後書 絵師 辞典 出口
あやよ「・・・・・・どうも。」
( ^ω^)「どうもですお」
荒巻「zzzZZZZZZ」
ニュース速報のトップで、訪れる人たちに愛想を振りまきながら挨拶をする僕と荒巻に一人のコテが挨拶をしてきた。
荒巻にはともかく寝る事が、僕には”ブーンである事”が、人前では要求されている。
もはや自分がブーンでもなんでも無いことが分かっている僕は、ブーンらしく振舞う事など大した意味は無いのだが、avexが必要としているのは僕ではなく”ブーン”だ。
僕に施された脳内規制のせいで、人前ではブーンとして振舞わなければならないという制約に従わなければならない。
( ^ω^)「これからもavexをよろしくお願いしますお」
このあやよというコテは、VIPでも見た事はある。
三年以上VIPに居たこのコテはVIPでも古参だったはずだ。
偶然、ex鯖が鯖落ちした時、VIPに居なかったコテの数人は生き残っていると聞いたが、あやよもその一人なのだろう。
VIPが無くなった事を知った、偶然VIPに居なかった住人の多くがニュース速報に流れてきているので、VIPのコテの生き残りがここに居ても不思議は無い。
・
なんという事は無い。
他のコテや名無しと同じように適当にへらへら笑いながら返事をするだけだ。
だが、このコテは僕の適当に返した返事に、思わずといった風に質問をしてきた。
あやよ「悲しいんですか・・・・・・?」
( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・・・・・ッッッッ!!!!!!」
僕は瞬間的に驚いて、その場で固まっていた。
――突然何を言い出すんだ、コイツは?
( ^ω^)「なんの、事・・、でしょうかお?」
答える僕の声はどうしようもなく震えていた。
何故僕はこんなに動揺しているのだろう。
僕の隣で寝転んでいる荒巻が、僕を心配して薄目を開けて僕を見ている。
本当は起きだして僕をフォローしたいのだろうが、脳内規制のせいで寝転がっていなければならない。
荒巻の顔が少し、余人には分からない程度に少しだけ悔しそうに歪む。
・
――僕は悲しくなんて無い!!!
―――僕はVIPとも2chとも何の関係も無い、ブーンの劣化品なんだ!!!
僕は必死に自分を落ち着かせようとする。
―――何をやってるんだ、僕は。はやく返事を続けるんだ!!
――――”悲しくなんてありませんよ、avexで働くのはとても楽しいです”と続けるんだ!!!
( ^ω^)「・・・悲しいよ。」
だが何故か僕の口からは考えていたのとは違う言葉がでた。
――何を言ってるんだ僕は!!!!
―――僕がなんで悲しまなくちゃいけないんだ!!!!
( ^ω^)「悲しいよ。」
先ほどよりも強い声で、僕は同じ言葉を吐いていた。
わけがわからない。
僕は何をしているんだ
・
僕の言葉に荒巻がビクリ、と体を震わせる。
僕の口から出た言葉に驚いているのだろう。
あやよ「・・・・・・そうですか。」
あやよが言った。
早く先ほどの自分の発言を撤回して、違う事を言わなければいけないのに、何故か僕の口は動かなかった。
頭が痛い。
脳内規制によって送られてくる命令と、自分の体を勝手に動かしている感情、それらが僕の頭の中でぶつかり合って激痛を生み出す。
( ^ω^)「ぐぅ・・・・ッ!!!!」
突然頭を抑えてうずくまる僕に驚いて、自分が何かまずい事を言ったのかと思ったのか、あやよが心配そうに僕にむけて謝る。
あやよ「えっと・・・すいません・・・・。」
さすがにこれは一目を気にしている場合ではないと判断したのか、荒巻が起き上がり僕の体を支える。
あやよは自分が原因で僕がおかしくなったと感じて、さっさとその場を離れようとする。
・
だが、最後にその口から僕に向けて言葉が放たれた。
あやよ「・・・・・・それでも、やっぱり貴方はブーンなんだと思いますよ・・・・・・。」
その言葉を聴いた瞬間、僕の脳内規制が僕の思考と意識を規制した。
一瞬のうちに、僕はその場に倒れふした。
意識が途切れる最後の瞬間、僕は思った。
僕は、僕は悲しくなど無いはずだ。
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