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avexの公式ページへと続く道を、僕は走り続ける。
両腕を水平に、これ以上無いほど力をいれて広げながら。
風のように、いや、風を追い越すかのような勢いで駆けていく。
夢の中で超絶さんに言ったように、今なら誰よりも早く走れる自信があった。

avexの警備員やZENの黒服が追いすがろうとするが、僕に触れる事すらできない。
今間違いなく、僕は風を超え、音を超え、光を超えていた。
まるで人口を加速度的に増やして言ったVIPのように加速していた。
だが、僕の速度はVIPのように落ちることは無い。
僕の加速はVIPのように終わる事は無い。
僕はどこまでも、いや、avexの公式ページを目指して駆け続ける。

目の前に黒服が立ちふさがる。
だが、僕の突進の前に木の葉を散らすように吹き飛ばされていく。
かつてVIPを流れていたVIPクオリティー。
今は無いそのクオリティーに、僕は完全に同調していた。

僕の目的はひとつだ。
avexの公式ページを、サーバーを、再び破壊してやる事。
彼等がさらに別のサーバーへと移転の準備を進めているかもしれないし、すぐにまた復活してしまうのかもしれない。
それでも僕は走り続ける。
ただVIPの事を、Vipperの事を思いながら。
走り続ける。

――けれど、もうVIPは無いのだ。
―――僕の守りたかった、愛したVIPはもう無いのだ。

そう僕の中の理性が告げる。

――知ったことか。

僕の中の本能が叫んだ。
確かにVIPはもうこの2chに無い。
さらにいえば、僕はブーンでも内藤ホライゾンでもない。
avexに作られた模造品だ。

だが、それがどうした?

僕はまがい物かもしれない。
それでも僕のVIPを思う気持ちに曇りは無い。
その気持ちだけはまがい物じゃない。
そう思えるようになった。
いや、そう思いたいと願うようになった。

目の前にavex公式ページの入り口が見える。
警備員達のあわてた顔が見える。
僕はそれを滑稽に思い、笑いつつも軽く目を閉じた。

――ああ・・・・今でも目をつぶれば、ほら・・・。

まぶたの裏に浮かぶのは、あのVIPの景色。

―――僕なら、やれる。




その日、avexの公式ページおよびサーバーが落ちた。
実は、avex社内のあらゆる電子機器も破壊され、保存されていたデータの殆ども消されたのだが、それを知るものは少ない。

そしてその日以来、ネット上から一匹のAAの姿も消えた。

 


 

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