扉 第一部 第二部 第三部 第四部 終章 後書 絵師 辞典 出口
目を覚ますとそこは2ch運営陣の詰め所だった。
どうやら意識を失った後、僕は運営に運ばれたらしい。
周りを見回してみると、荒巻が床に寝転がっていた。
「もう良くなったのかい?」
突然声をかけられて振り向くと、そこにはrootが居た。
ひろゆきがのまタコなどの、avexへの対抗策が原因で、avexからの圧力であること無い事冤罪をでっちあげられて逮捕されてしまった後、一人でサーバー管理と運営の統率の両方をこなしている苦労人だ。
root「VIPの事は残念だったね・・・。」
どうやらrootは僕がVIPが無くなった事で情緒不安定になっていて、こんな事になったと思っているらしい。
なんなんだ・・・・・。
会うやつ会うやつ、どうして僕が悲しんでるなんて勝手な事言ってくるんだ・・・。
VIPとも2chとも何の関連も無い僕が、悲しんでるわけ無いだろうに。
・
と、ここまで考えたところで脳内規制が僕の思考を規制。
さらに、VIP関連の話題も毒にしかならないと判断したのか、rootの声も完全に規制。
rootはまだ僕を気遣うような事を言ってるようだが、何を言ってるかは規制されているので聞こえない。
やがて、rootはしゃべり終わると僕に何かを手渡した。
声が急に規制されなくなったので、もうVIP関連の話題は終わったのだろう。
( ^ω^)「・・・・・・これは?」
僕が尋ねる。
root「ちょっとした倉庫の鍵だよ。これからURLを教えるから、それで開錠して見てごらん。」
rootはそう言うと、まだ仕事があるから、と部屋から出て行ってしまった。
僕はさっさと次の仕事場に向かおうとも思ったのだが、時計を見てまだ時間上がる事を確認した僕は、その倉庫とやらに行ってみることにした。
途中、床に転がっている荒巻があまりにも幸せそうに眠りこけていたので、なんだか無性に腹が立ってわざとその腹を踏んでやった。
荒巻が奇声と共に起き上がるが、僕はそれを無視して部屋から出て行った。
・
rootから教えられたURLにたどり着いた僕はさっさくそのページの入り口に設けられた扉の鍵穴へと鍵を差し込む。
差し込んだ鍵をそのまま捻ると、ガチリ、と扉の内部から音が響き、ゆっくりと扉が開いた。
そこに僕は信じられないものを見た。
開かれていくその扉の奥に見える光景、それはどう見てもVIPだった。
広大な空間の中、いくつものスレがちらばっていた。
数レスしかレスの無いネタスレ、三桁以上のレスがあるPartスレ。
( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・」
僕はその光景にしばし言葉を失い、扉の前に立ち尽くした。
僕の故郷。
だが、僕の故郷ではない場所。
僕の生まれ場所であり、僕自身の生まれ場所ではない場所。
僕と関連の深い、しかし今の僕とは何の関連も無い場所。
VIP。
・
だが、そこは僕の知ってるVIPではなかった。
かすかな違和感を覚えて、よく観察してみる。
このVIPからは、なんというか、人気のようなものを感じなかった。
活気が無いとでも言うのだろうか・・・・。
人が一人も居ないが、そういう問題ではなく、生気とかそういった類のものがこのVIPからは感じられなかった。
板全体から”終わった”感じが漂っている。
そこで僕はrootが何と言っていたかを思い出す。
そうだ、彼は”倉庫”と言っていた。
―――そうか、ここはVIPではなくて
――――VIPの過去ログ倉庫というわけか・・・・。
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