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僕は過去ログ倉庫の中で寝てしまっていたようだ。
起き上がろうとしたとき、自分の頬が濡れていることに気づく。
流れる空気が頬に当たって冷たい事この上ない。
そう、冷たかった。
心が。

それでも僕はわかっていた。
あの夢の中に彼等が出てきていた意味。
彼等が僕を置いて行ってしまった意味。
彼等が僕に何を頼み、託したのか。
僕は分かっていた。

メールを確認すると、そこにはavexから注意を促すようなメールが大量に届いていた。
僕はゆっくりとそれらを眺めると、ためらわずに削除した。
そしてそのまま過去ログ倉庫の出口に向けて歩き出す。

できればこのVIPの匂いの残る倉庫でずっと過去のVIPの栄光を眺めていたかった。
もうこの倉庫から出たくは無かった。
この倉庫にいれば、僕はあのVIPをかけていたブーンに成れると思えた。

でも、それは駄目なんだ。

僕は静かに過去ログ倉庫の扉を開けて、外に出る。
鍵を閉めると、そのままその鍵を両手で曲げて、Datの海に向けて放る。
そして静かに目を閉じて、決意を確認する。


――僕はやらなければならない。


まぶたの裏に染み付いた、彼等の顔が僕を前へと進ませた。

 


 

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