第一部 第二部 第三部 第四部 終章 後書 絵師 辞典 出口


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何日かVIPを歩き回って、僕はある事にきがついた。
僕以外のAAをあまり見かけないのだ。
僕は思い切ってその事を名無しの人に聞いてみた。

「結局VIPは負けてしまったんだよ^^; 二年前のあの日、VIPは戦うことを放棄してしまったんだ^^;」

特徴的な顔文字を多用するその名無しは親切に応えてくれた。

「そりゃあ最初はみんなだって戦ったんだ^^;でも、本当の敵は2chの中に居たんだ^^;」

( ^ω^)「本当の敵?」
僕は思わず聞き返していた。

「そうだよ^^;今まで2chを宣伝場所に利用したり、ネタに使っていたはずのフラッシュ職人やフラ板住人が僕たちを裏切ったんだ^^;」

彼は続けた。

「二年前のあの日、^^; 僕たちは僕たちのマスコット達を守銭奴達から守ろうとした^^; でも、その守銭奴に踊らされていたピザ女とMixiで繋がりのあったフラッシュ職人達が造反を起こしたんだ^^;」

そこまで語って彼は目線を下に向けた。

「結局、何時までたっても大きな結果は生み出せなかった^^; だからこそ飽き始めてくる住人達が増え、ますます僕たちは抵抗する術を失くして行った^^; そしてみんなが気付いた時には僕たちのマスコット達のほとんどが取り上げられてしまったんだ^^;」

彼は彼なりにVIPについて思うことがあるらしく、投げやりだったその口調にはだんだんと感情がこもり始めた。
彼自身の語る”二年前のあの日”に感じた感情が再び彼の中で蘇ってきたのだろう。

「VIPの革命王子やピストンなんかの若手のコテや新参の名無し達はまだまだ戦う気概を無くしていないんだ^^; 古参のコテや名無しの中にも現状を憂いているのは居る^^;」

僕は彼なら何か知っているかもしれないと思って聞いてみた。

( ^ω^)「あなたは僕の名前を知っていませんか?」

「残念だけど僕には教えることが出来ない^^; 僕が仮に君の名前をタイプしたとしても、”規制”されてしまうだろう^^;」

彼は真剣なまなざしで僕を見つめるとこう続けた。

「それは君自身で探すしかないんだ^^; 僕たちのような現実世界の住人ではなく、”規制”されないAA達、Avexに権利を管理されていないAA達ならともかく ^^;」

( ^ω^)「僕以外にもAvexから逃れているAAが居るのですか?」

小さな、儚い、だが僕にとっては大きな希望が込められたその声は、スレの中に響かずに消えていった。
僕の声は震えていた。
自分が何物なのかわかるかも知れないのだ。

「ああ^^; 君以外にも何匹かはAvexから逃れているらしい^^;抵抗の激しいもの、理由があって商業化できないもの、ギコやマララーなんかはもう二年もAvexから逃れ続けている^^;」

ギコ・・・。とても懐かしい名前。
僕なんかよりもずっとずっと古い名前。
2ch以前から存在したAA。

「ギコが最近になってVIPに現れたと聞いたけど^^; 彼ならきっと君の力になってくれるよ^^;」

僕は自分の胸の高鳴りを抑えられなかった。

( ^ω^)「ありがとうございます ギコさんを探してみようと思います。どこに居るのか、大まかな情報はありませんか?」

「うん^^; 実は君と一緒に僕もギコを探してあげたいんだけど、どうもそういうわけには行かないようだ^^;」

( ^ω^)「どういうことですか?」

「^^; どうやら僕はこいつの相手をしなきゃいけないらしいからね^^;」


そういうと彼は僕の後ろを指差していた。
僕が後ろを振り向くと、ちょうど誰かがこのスレに入ってくるのが見えた。

(・ω・)のし「やぁ、『━━━━』、ここに居たのか。AvexやFlash50がずっと君の事を探していたよ。」

ゆっくりと彼はスレの中に入ってくると、僕にむかって「(C)Avex/わた」と書かれた首輪をはめようと、僕の首をわしづかみにしようとする。
その手は早すぎて僕の目には捉えきれなかった。

僕の目が認識できたのは、その腕が別の腕に取り押さえられている所だった。

( ^ω^)「名無しさん・・・・。」

あの独特な顔文字を多用する名無しさんが僕と新たに入ってきた男の間に割り込んで居た。

「やあ^^; のし部屋管理人の(・ω・)ノシさん^^; 売2ch奴がVIPに何の用なのかな?^^;」

名無しさんの軽口にのしと呼ばれた男はあざけりを口の端に乗せて言い返した

(・ω・)のし「いやね、ワタクシ、わたさんやFlash50さんに逃げ出した『━━━━』を見かけたら捕まえるように頼まれたんですよ。ようがあるのは『━━━━』だけで、こんな過疎板にはもう用は無いんですよ。」

「さんざん2chのAAをネタにしたり、宣伝場所として利用したり、住人にヨイショしてもらっておいて、恩を仇で返すなんて最低ですね^^; あなたの顔なんて見たくないです^^;」

(・ω・)のし「じゃあ早く『━━━━』をワタクシにわたして消えてください」

「あのさ^^; きみは三秒前の人の発言すらおぼえて無いのかな?^^; 僕は好きで君の顔をみてるわけじゃないんだよ^^;」

そこまで言って名無しさんは壷を閉じ、ブラクラ対策にタブブラウザを開いた。

「消えるのは君のほうだと思うよ^^;」

それまで名無しさんが隠していたコマンドプロンプトが発動する。
発動したトレーサーで(・ω・)のしのIPを追跡し、Pingを複数同時起動、マシンパワーにモノを言わせて(・ω・)のしのPCに負荷をかける。
それを察知した(・ω・)のしが自分たちの管理する鯖を経由してスレそのものにDDOSアタックをかける。
(・ω・)のし「鯖堕ちしてしまえば何板ともわからなくなるね」

僕は負荷に軋んでいく鯖の中で確かに名無しさんの声を聞いた。
「僕は適当に切り上げてにげるから^^; きみも早く逃げちゃってよ^^;」

軋みだしてラグが大量に発生したスレの中で、僕は朦朧とする意識のまま逃げようと歩き出した。

「君は僕たちVIPのシンボルなんだからさ^^;」

そして僕の意識が闇に堕ちた。




 

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