扉 第一部 第二部 第三部 第四部 終章 後書 絵師 辞典 出口
狐と別れた僕は、ひたすらVIPを彷徨っていた。
日が経つにつれ、VIPを訪れる人は少しづつ増えていった。
姉ちゃんうめぇwwwwwww
1「マジうめえwwwww」
( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・」
4「3げt」
5「>>4 プ」
6「>>4 >>4 >>4 >>4」
鯖堕ちから復旧したばかりのVIPに立つスレでは3を取るのが流行っていた。
3をどれだけ早く取れるかを競い合っているようだった。
( ^ω^)「なんで3を取る事にそんなに必死になってるんですか?」
僕は彼等に聞いた。
4「半年間ROMってろ>>3」
15「>>4逆恨み必死だなwwww」
16「↓涎先生から一言。」
涎「『━━━━』、久しぶりに見た。」
新しく現れたその涎というコテは、一部の名無しから熱烈な支持を受けているらしい。
僕は彼にゆっくりと話を聞いてみた。
・
彼が言うにはスレが経ったばかりの頃にできるだけ早く3を取るのが流行っているらしい。
彼等は最近の3ゲッターのコテ達や使われているAAについて話し合っていた。
その顔は、今のVIPには似つかわしく無いほど明るかったが、僕にはどこか薄っぺらく感じた。
( ^ω^)「でもなんで3なんですか?2をとった方がもっとすごいと思うんですけど」
僕は疑問に思ったことを聞いてみた。
しかし、僕の質問に一様にみんなは口を閉ざした。
今までの楽しそうなふいんき(←何故か変換できない)が一転して、どこか空虚な声で彼等は僕に説明してくれた。
「超絶が居るから無理だろ。」
「昔はちゃんとスレに合ったAA選んでたんだけどな。」
涎「もうのまネコのAAしか貼らなくなったな、あいつ。」
彼等の顔には一様に「仕方が無い」という表情が浮かんでいた。
それは僕がこのVIPに来て、一番よく知った顔だった。
「終わってしまった」顔だった。
なんだか僕はとても悲しい気持ちになった。
・
涎「俺の姉ちゃんも(ry」
「涎先生の作品キタ━━(゚∀゚)━━!!」
「涎先生の作品が読めるのはVIPだけ!」
再び彼等は雑談に戻っていった。
2を取る事を諦めてしまった彼等。
2を誰かに取られても何も悔しそうにしない彼等。
闘争心を失った彼等。
有為転変、物事は変わって言ってしまう。
変わってしまったVIPに僕はなんだか泣きたくなった。
僕は言われてみてあちこちのスレを見てみるが、どのスレを見ても2には超絶というコテがモナーのAAを貼っていた。
僕はその超絶というコテに興味を持った。
僕はギコさんを探す傍ら、超絶を追いかけていた。
何度かスレが立つたびに僕は彼よりも先に2をとろうとしてみたが、超絶は常にスレの立った三秒以内にレスを返していて、まったく太刀打ちが出来なかった。
・
( ^ω^)「2」
4「>>3 >>3 >>3」
5「『━━━━』、必死だなww」
涎「『━━━━』、最近よく見るな。」
僕はしばらく超絶の後を追いかけ続けた。
ある日、僕以外にも超絶を追いかけている連中が居るのに気がついた。
全員が全員、バラバラな格好をしていて、どうもZENの黒服達ともFlash職人達とも違うようだ。
僕は嫌な予感がしたので物陰に隠れて彼等を観察した。
するとその集団の先頭に立っている居丈高な態度の無駄に偉そうな男が言った。
「早く超絶を探し出せ。avexの連中がおかんむりなんだよ。」
( ^ω^)「涎さん、あの超絶を追いかけてる連中はなんなんですか?」
僕は物陰から偶然そのスレで再開した涎さんに尋ねていた。
涎「ああ、あれはVIPの運営を任されている運営人や削除人達だよ。あの先頭で偉そうにしているのは讃岐っていう元VIPのコテでFOX★の後釜だよ。」
涎さんは、おそらく昔のVIPを思い出しているのだろう、遠い目をしながら語った。
・
涎「讃岐も昔はあんなヤツじゃなかった。運営の犬と嫌われる事もあったけど、みんなのためになるような事もたくさんしていた。ところが、キャップを貰い、avexに支配された2chのVIPの運営を任されるようになってから人が変わってしまった。」
その讃岐が涎さんの方を見る。
讃岐も涎さんもお互いに何か思うところがあるのだろう、彼等は一瞬だけ視線を合わせると、何事も無かったかのように目を逸らした。
讃岐はまるで涎さんなど知らないとでも言うかのように、削除人達を引き連れて別のスレへ向かった。
僕はその運営人達の視界にできるだけ入らないようにしながら、彼等の後姿を見つめていた。
僕はその日、2を取ったばかりの超絶に会うことが出来た。
正確には削除人と讃岐達に囲まれた超絶を。
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