第一部 第二部 第三部 第四部 終章 後書 絵師 辞典 出口


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Datの海に沈む寸前のスレで二人のAA(彼等を二人と表現するのかどうかは謎だが)がsage進行で語り合っていた。

ギコ「ブーン、お前は、今のこんな状態のVIPになんで居続けるんだ?」

( ^ω^)「僕はこの自分がどんなAAだったか知りたいんです。」

ギコ「しかしお前ほどのAAの話なら他の板でも聞けるはずだ。おまえがある程度有名なAAだという事は知っているんだろ?」

( ^ω^)「では、ギコさんこそなんでVIPを彷徨っていたんですか?」

ギコ「・・・・・・・・・・・・・・」

猫のAAが押し黙った。
暫くVIPの他のスレを眺めた後、彼はこういった

ギコ「タカラの奴等にさらわれかけた時に首輪をつけられた首がうずくんだよ・・・」

( ^ω^)「?」


ギコ「兵どもの夢の跡ってな・・・。こうなるとVIPも寂しいもんだ。」

彼のその呟きはもう一人のAAに聞こえる前に、小さくなって消えていった。
彼等の下に広がる数々のスレを飲み込んだ混沌の世界、Dat落ちしていったスレが収納されるDatの海がその暗い大きな口をぽっかりとあけているのが見えた。
そのVIPの”終わり”の象徴の中に沈んでいった数々の過去の名スレを思い、彼等は共に押し黙った。
終わってしまった者ほど、栄えた過去ほど、彼等には懐かしく、そして思い出の中で美化されていた。

僕がギコに出会ったのは超絶と分かれてから一週間ほど経ってからだった。
彼は思っていたより簡単に見つかった。
なにしろ、Avexやフラッシュ職人、運営人達が捜し求め、それを快く思わない2ch住人達の最後の希望とも言える存在なのだ、彼の噂は簡単に集めることが出来た。

ギコ「珍しいヤツに会ったな。」

ギコさんは僕を見るなりそう言った。

ギコ「二年間も姿を消していたと思ったら、どこに行ってやがった。お前がAvexに捕まったっていう噂まで流れていたんだぞ。」

( ^ω^)「ギコさん、こんにちわ。それが、僕にもよくわからないんです。」

ギコさんは”何を言ってるんだコイツは”という顔をして、僕を注視する。

ギコ「どうでもいいが、おまえ、なんか感じが変わったな。口調も違うし。」

僕は素直に彼に事情を話した。
気がついたら記憶を無くしてVIPのスレの中にひとり佇んでいたこと。
少しずつ、断片的にだが記憶を思い出したこと。
ZENと名乗るAvexのダミー会社の黒服連中に追われている事。

ギコさんはだんだんと事情がつかめてきたようで、僕にいろいろと説明してくれた。
昔の僕の口調の癖や、どういった経緯で僕が生まれたのか。

( ^ω^)「僕の名前はブーンと言うのですか?」

ギコ「いや、お前の本当の名前は別にある。だが流石に規制の影響を受けないはずの俺でも、うかつにお前の名前を出すと奴等に検閲されて居場所がバレそうだ。」

どうやら彼の口からも僕の本当の名前は語ることが出来ないようだ。
僕は少しがっかりした。

ギコ「だが、お前がブーンという名前でも呼ばれていたのは事実だ。」

彼が言うには、僕にはブーン以外にもVipper達につけられた”本当の名前”があるのだという。
そして、やはりその名前を知りたければ僕自身の手でその名前を思い出すしか無いのだという。
僕はその名前を思い出すことが出来れば、自分の記憶も完全に戻るのでは無いかと、根拠の無い漠然とした思いを感じていた。
彼はさらに語った。

ギコ「多分、お前がAvexに捕まったという噂は本当なのだろう。だからお前の名前を呼ぼうとすると”規制”される。奴等がもうお前の権利を手に入れたと認識している証拠だろうな。それで逃げ出してきたお前を捕まえにきてるんじゃないのか?ZENやフラッシュ職人の連中は。」

( ^ω^)「そうですか・・・いや、そうなのかお。」

ギコ「無理に口調を戻さなくてもいいんじゃないのか?」

( ^ω^)「いいえ、やっぱりこの口調で喋る僕が本当の僕なんだと思うお」

とは言ってみたものの、僕はこの口調に今ひとつ馴染めなかった。
ギコさんも僕に違和感を感じているようで、どうも首をかしげることが何度かあった。


ギコ「おまえ、なんか性格変わってないか?」

( ^ω^;)「そんな事無いですよ、いや、そんな事ないお」

ギコ「・・・・・・・・・やっぱなんか変だわ、おまえ。」

暫く語り合ったあと、僕は彼についていくことにした。

僕たちは慎重に、Pingを打ってその反応を確かめながら、誰かが周囲に居ないかを探って歩き続けた。
ギコさんはAvexの前にもタカラという企業にさらわれかけたことがあるらしく、逃げ続けたり反抗し続けることには慣れているのだという。
その間、ギコさんは2chの歴史やVIPの成り立ちについていろいろと教えてくれた。
過去の栄光、そして今のVIPの没落を知るに連れて、僕の心にはどんどん暗雲が立ち込めていった。
ギコさんはVIPを旅しながら、avexに対抗するための手段を探しているのだという。




 

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