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「君たちに問うが、このVIPは誰のものなのだろうか?
 運営の物か?だが君達の書き込みが無ければこのVIPは存在していないだろう。
 ではavexの物か? これは絶対に違うといえるだろう。理由は説明するまでも無いな?
 ならば今VIPに居る、君たちのものなのだろうか?これが一番正解に近いような気もするが、それは違う。
 何故なら、今ここにVIPが存続しているのは今ここには居ない過去にVIPの栄光を支えてきた者達の存在もあるからだ。
 ではVIPは過去の栄光を支えてきた者たちの物なのだろうか?もちろんこれも違う。」

穏やかだった大佐の声にだんだんと熱が篭り始める。

「このVIPは今ここにいる者達のものであり運営のものであり、過去VIPに居た者達のものでもある
 今ここにいる者たちが、居ない者達が、avexが好き勝手にしていい物では無いはずだ。」

今や大佐のその演説には熱弁と呼べるほどに熱が篭っていた。

「現在、我々VIP運営陣はVIPを潰そうとするavexの意向に逆らったため、彼等に囲まれている。
 私から君たちに言えることはもはや一つだ。自分の物は、自分たちのものは自分たちで守れ!
 自分たちのケツくらい自分たちで拭け! 以上だ。」

やがてアナウンスは終わった。
大佐の演説の内容はそれほど真新しいものでも、斬新な物でもなかった。
だが誰もがその熱意だけは感じ取っていた。
VIPが無くなってしまうという事実を実際に突きつけられたという事もあるだろう、
avexのAAやZENの黒服という脅威が自分たちに実際に向けられているという強迫観念もあっただろう。
だがその時、今まで無気力だった住人達の目に何かが宿ったのは確かだった。。

ある者は立ち上がり、avexのAAやZENの黒服達に立ち向かっていった。
ある者はスクリプトを組んで田代砲を、文字列をタイプして武器のAAを書き込んでいった。

ある者はVIPがニュー速のゴミ箱だった時代からVIPに居続けている古参だった。
ある者は古参という程では無いが、avexに支配された時もVIPを見捨てずにVIPに居続けた古株だった。
ある者はavexの支配が始まった後で、過去の栄光を知ってVIPに来た新参だった。

だが彼等の目には一様にして同じ光が宿っていた。
それはまだVIPがニュー速のクソスレ倉庫として試験的に生み出されてから独立したばかりの頃、
本家のニュー速に負けるなとばかりに、ともかくがむしゃらに何でもかんでもやれることをやりつづけた、
VIPの栄光を、VIPのクオリティーを打ち立てたもの達が、あのゴミだらけのVIPでその目に浮かべた光と同じものだった。

やがてVIP全体が戦場と化した。
VIP住人に立ち上がらなかった者は、居なかった。

僕達は大佐のその演説を聴き終えて、しばらく誰も喋らなかった。いや、何も喋ることができなかった。
誰もが自分達がVipperだという事を再認識させられ、その胸に暖かさのようなものを感じていた。
その暖かさはやがて炎となり、自分たちの戦いのための動力源となるのだろう。
僕は自分の胸に生まれたその暖かさを大事に心の奥底に仕舞った。

ギコ「行くぞ。」

ギコさんが言った。
微塵も迷いを感じさせない声音だった。
他のコテや名無し達も無言で頷く。
今や僕たちの中に迷うものはいなかった。
その目に強い意志が宿る。

騎士「ああ、VIPはまだまだ大丈夫だ。先に奴等を叩いてしまえば問題無いだろう。」

騎士さんがどこか誇らしげに、家族の自慢をするように言った。
その気持ちは僕達全員が同じだった。

僕達はその足を力強く地面に押し付けながら走った。

不意に、誰かがVIPの入り口のある方向に向けて言った。

「あと頼む」

誰が言ったのかわからないその小さな呟きは消える事無く、風に乗って全員の耳に響いた。
何故か心地よかった。


 

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