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僕達はavexの公式ページに来ていた。
avexは2chから奪い取ったAA達の商業化でどんどんネット上でも影響力を伸ばしていき、
それに伴い公式ページもどんどん更新されていった。
今やavexの公式ページは2chのような巨大掲示板群とは言わないまでも、ネット世界でもかなり大きな構造物と言えた。
僕はその莫迦のようにでかい、円形のビルを見上げた。

ギコ「狙うのは中心でこのページを支えているサーバーだ。中に入ったら、全員中心のサーバーを目指せ。」

ギコさんが言った。

ギコ「URL打ち込んで狙うんじゃなくて鯖に田代砲を直接ぶち込んでやれ。」

そう言うとギコさんはさっさとavexの公式HPの門をくぐっていってしまう。
僕たちはギコさんの後に続こうとして――――

  ――――そして僕はギコさんの背中に頭をぶつけた。

僕は何事かと思いギコさんの顔を見た。
その顔には驚愕が張り付いていた。
僕も急いでギコさんの視線の先を追う。

avexの公式サイトの入り口に入って真っ先に見えたのは床一面を埋め尽くす赤、赤、赤、赤。
ひたすら濃い赤色。そしてその中に沈む数多くの死体達。
おそらくavexの通販を利用しようとした人達やavexの職員、AA達だろう。
そして認識した瞬間感じるむせ返るような血のにおい。
それによって引き起こされる嘔吐感。

僕はその圧倒的な血臭と視界を埋め尽くす赤色に気おされながらも、その死体達を間近で観察しようと、公式ページの建造物内へ一歩踏み出す。

―――ぐちゃり、という音とともに何かやわらかいものを踏みしめる感触。
僕が足元を見てみると、床にぶちまけられた血とともにピンク色の肉片がところどころに転がっていた。

ギコ「酷いな。」

ギコさんは思わずといった様子で呟いた。
そして手近な死体の傷口に指を突っ込む。

ギコ「刃物で滅多ざしにされた死体が多いが、田代砲でバラバラに吹き飛ばされたものや、Pingでパケットを送り付けられたりDOSアタックで負荷をかけられた死体もあるな。」

そういいながらもギコさんの指は死体の内側を引っ掻き回すように動く。

ギコ「それにこの死体、まだ暖かい。肉の色もまだピンクのままだ。死んでからそれほど時間はたっていないな。」

最初の驚きから立ち直ったギコさんは、もう眉一つ動かさずに冷静に死体を調べ始める。

僕たちはまだ暖かい死体から漂ってくる匂いに表情を硬くしながら進んでいった。
奥に行くにつれてだんだんと死体は増えていった。
おそらく抵抗したavex側の職員であろう武装した死体やAAの死体が多くなってきた。
通路の床は完全に真っ赤に染め上げられ、その中に肉の新鮮なピンク色と骨の薄くピンクがかった白色だけが映えていた。
それらはどうしようもないほどに死んでいた。
どうしようもないほどに”終わっていた”。
まさに地獄絵図。
唐突に僕の頭に一つのフレーズが浮かぶ。
”ここは地獄の一丁目。” 



 

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