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わた「さぁブーン、観念して降伏しなさい。avexはあなた達が考えてるような会社じゃないわ。」

目の前にずらりと居並ぶ黒服の先頭に立つ、太り気味、というか太った女が一歩前に出てきて言った。

わた「これからはavexのために働くと誓うなら、これまでの事は不問にしてあげてもいいのよ?」

太った女が続ける。

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・・」

僕は何も言わない。
太った女、わたは先ほどからやたらと僕にavexのために働け、と言ってくる。
口調からは隠しているが、内心では僕を商業化したくてたまらないらしい。
僕ひとりでこの黒服達の包囲網を抜けるのは難しい。
だから僕はわたの焦りを引き出して隙を探さなければならない。 

わた「いい、貴方がここで『はい』と言えばVIPも存続させてあげるし、貴方もavexで厚遇を受ける事ができるのよ?」

僕の狙い通り、わたの声には苛立ちが混じり始める。
まだ話し始めてから十分も経っていないのに随分と短気なピザだ。
それにしても、よほど僕を商業化したいらしい。
avexの上の方からの命令だろうか?

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・・」

僕は内心呆れ果てながらも黙っている。
この短い時間で僕は目の前のピザの性格は大体把握できた。
相手が何か反論するよりも、沈黙の方が我慢できないタイプだ。
とんでもなく気の短いタイプだ。
後ろの黒服達も呆れたような顔をしている。
・・・・もしかしたらこれはチャンスなのではないのだろうか?
しまった、ついつい相手の短気さに呆れてしまっていた。
狙って短気さを演じているのなら大したものだが、おそらく素だろう。

わた「ちょっと!人の話聞いてんの!!?」

わたがそう叫んだ瞬間、僕は疾走に入っている。
わたは驚いて、その体中にこびりついている脂肪を振るわせ、逃げようとする。
だが間に合わない。
既に僕の田代砲の銃口はわたを打ち据えている。
「ぎゃぶッ」とか「うぎゃっ」としか表現の仕様の無い規制がわたの口から漏れる。
わたはそのまま鼻から血を流しつつ地面へと倒れこむ。
この時になってやっと黒服たちがわたに対して向けていた呆れ顔に緊張を走らせる。
今頃になってようやく僕への警戒の視線を向けるが、遅すぎる。
僕は目の前の手近な黒服の顔に田代砲の銃口を叩きつける。
多分鼻の骨くらいは折れただろう。
だがavexのダミー会社でしかないZENの黒服が倒れる事は無い。

黒服は倒れない。
黒服は死なない。
黒服は退かない。
黒服は躊躇わない。

周りで包囲の陣形を取っていた黒服たちが一斉に僕へと押し寄せる。
僕はさらにサーバーと僕とを結ぶ斜線上にいる黒服を田代砲の銃で殴り倒す。

しばらくすればまた起き上がってくるのだろうが、僕がサーバーに田代砲を打ち込むだけの時間が稼げればそれでいい。
田代砲を打ち込んでやればもっと時間が稼げるのだろうが、今ここで田代砲を撃つわけにはいかない。
サーバーに処理速度が追いつかなくなるまで徹底的に打ち込んでやらなければならないのだ、無駄弾は撃てない。
そのまま倒れる黒服を押し退けてサーバーへと田代砲の狙いを定めようとする僕の左腕に痛みが走る。
僕へと押し寄せてきた黒服の一人が、手にした警棒で殴りつけていた。
わたに僕を殺さないように命令されているのだろう。黒服たちは刃物や銃器などではなく、警棒を握っていた。
僕は腕に鈍い痛みを感じつつも、僕の左隣に立つそいつを田代砲で殴り倒す。
これが今まで僕が出会ってきたコテやAA達なら、もっと大きなダメージを黒服に与える事もできるのだろうが・・・・・。
ともかく、今はそんな事を考えている場合ではない。
再び田代砲を持ち上げて銃口をサーバーへと向ける。
しかし、その頃には他の黒服たちが僕へと殺到していた。
僕の左腕が再び殴られる。
先ほどの鈍い痛みが残っていた左腕にさらなる激痛が走る。
これは折れてしまったかもしれない・・・・。
僕は思わす構えていた田代砲を取り落としてしまう。
地面に転がる田代砲。

それを掴もうとする僕の右腕がさらに黒服によって蹴られる。
だが僕はその蹴り足をつかんで、逆に引っ張ってやる。
バランスを崩した黒服が倒れる。
瞬間、僕の背中に激痛が走る。
黒服たちが僕の背中に警棒を叩きつけていた。
僕は何とか右腕で田代砲を掴むが、さらに僕の背中には黒服たちの警棒が荒らしのように降り注ぐ。
激痛、とてもそんな言葉では表現できないような痛みが雷のように僕の神経を駆け巡る。
何人かは僕が握る田代砲を叩き落そうと、腕を集中的に狙ってくる。
あまり肉のついていない手首の辺りを集中的に。
僕の腕がきしみ、悲鳴を上げる。
それでも僕は田代砲を手放さない。
顔面も殴られる。
頬のやや下あたりを思い切り殴られた。
テコの原理で脳みそが揺れて、気持ち悪くなる。
吐きそうになるのを堪えながら歯を食いしばると、口の中に異物感を感じる。
歯が折れていた。
僕はその折れた歯を血と共にぷっと口から吐き出す。
そして田代砲を体全体抱で込むように握ると、取り上げられないようにそのままダンゴ虫のように体を丸めた。
それでも黒服たちの振り下ろす警棒に容赦というものは感じられなかった。
体を丸めたところを徹底的に警棒で殴られる。
転がされ、蹴られ、殴られに殴られる。徹底的に、体中を間断なく殴られまくった。
たまに警棒が僕の延髄にはいり、気絶しそうになるが、なんとか堪える。
今ここで気絶するわけには行かない。

何としてでも、僕にいろんなものを託してきた皆の思いに報いなければいけない。
やがて、さんざん殴り、蹴り転がされた僕は、どちらが上でどちらがしたかも分からなくなる。
僕はひたすら頭と、田代砲を握る腕をかばって丸まり、殴られ続けるだけだ。
やがて自分が感じているのが痛みなのか何なのかわからなくなり、ただ灼熱間だけを感じていた。
しばらく我慢していると、動かなくなった僕を見て気絶したのだと思ったのだろう、黒服たちの動きが止まっていく。
僕は再び自分にチャンスが巡ってきたのを悟った。
黒服の一人が、丸まった僕に「これで最後だ」とでも言うように大きく振りかぶった警棒を頭に叩きつけようとする。

だが、今までピクリともせずに体力を温存していた僕は、すばやく左手を跳ね上げてその警棒を防ぐ。
無我夢中で左手を振り回したため、警棒にあたった小指が変な方向へと折り曲がる。
普段なら激痛が走るのだろうが、どういうわけか、散々殴り転がされた今の僕に痛みを感じる余裕等無いというかのように、僕の痛覚は沈黙していた。
黒服たちの顔に驚愕が走るよりも早く、僕の右手が持ち上がる。

今ここでこのまま殴られて気絶させられるわけには行かなかった。
僕がここまでたどり着くために騎士さんやギコさん、VIPのみんなから託された物を、やり遂げなくてはならなかった。

僕は右手一本で田代砲の銃身を持ち上げると、黒服たちの足の間から田代砲の銃口を突き出す。

――――――巨大な円柱型のサーバーに向けて。

僕は引き金をひいた。
引き続けた。僕の処理速度の限界を超えるまで徹底的に打ちつくした。

 
 
 
 
 
 

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