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ブーンの田代砲が連続してサーバーに命中したその瞬間、サーバーの全体に振動が走った。
サーバーの外壁には傷一つつけることができなかったその衝撃は、しかし確実にサーバーの内部に処理速度の遅滞を生み出していた。
それは本当に小さな、一瞬ともいえる”動作の遅れ”だったが、今までそのサーバーの隙を探す事だけを考えて監視し続けていた人間には、十分過ぎるほどの”隙”となった。
avex内の情報室を占拠し、そこからしつこくサーバーに対して攻撃を加えていた馬愚那には。

馬愚那は最初から、ギコやブーン達にサーバーを攻撃させ、そこにできた隙を狙う算段だった。
そして、そのチャンスが今巡ってきたのだった。
今まで馬愚那のクラックを防ぎ続けていたサーバーの動作に生まれた一瞬の遅滞をついて、馬愚那が仕掛けを施した複数の、avexや2chとは何のつながりも無いサーバーから送られたパケット達が送り込まれる。
自分だけで負荷をかけ続けるDOSアタックではなく、、複数のサーバーに攻撃的なプログラムを仕掛けてそこからも負荷を与えるdDOSアタックだ。
一瞬の動作の遅滞にさらに負荷をかけられ、avexのサーバーの処理領域は占有されていく。
しばらくすると、avexの公式ページに大きな揺れが発生した。
ページ内のあちこちが崩れ始める。
サーバーのある中心部に行けばいくほど、大きな被害が出ている事だろう。

その後もラグが発生し続け、公式ページのあちこちから何かが崩れる音や破砕音が響き渡る。
負荷がサーバーの処理速度を超えつつあるのだ。

馬愚那「ここまで行けば、後は放っておいても問題ないな。」

そうつぶやくと馬愚那は情報室を後にした。

せいぜいここのサーバーは持ってあと数分だろう。
数分のうちに自分がこの公式ページ内から脱出するのは不可能だ。
おそらく、他の突撃してきた名無しやコテ達も。
彼等もサーバーを破壊すれば、そのサーバーに支えられているページに居る自分たちがどうなるかは百も承知だったはずだ。
だが、だれもそれを口にする事はなかった。

馬愚那「誰もがこんな事は覚悟していた・・・・・というわけか・・・・。」

馬愚那の独白は続く。

自分は死ぬだろう。
自分たちは死ぬだろう。
元からネット上だけの存在であるAA達ならともかく、現実とリンクしている自分たちに生き残る術はない。

――――ならばやる事は一つだ。

自分のスタイルを貫き通すのみ。

彼は外の通路を適当に歩いていくと、被害の多かったであろうサーバーのある中心部へと歩を進めた。
途中、逃げようとしているavexの職員を見つけて捕まえた。

早く逃げたくて仕方ないという表情をしているそいつの足を打ち抜いて、逃げ出せないようにすると、彼は聞いた。
常と変わらぬ、感情を感じさせない口調で。




馬愚那「てめぇは神ですか?」 

 

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