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引き金を引き続けていた僕の右手の人差し指が止まる。
連射されている田代砲の銃身がだんだんと熱を帯びていき、田代砲を握る僕へと負荷をかけていく。
やがて負荷に耐え切れなくなった僕の手が田代砲を手放す。
そこへ黒服たちがまた殺到して警棒で殴りつけてくる。
背中へ、顔へ、田代砲を手放した腕へ、容赦なく警棒が叩きつけられる。
二本目の折れた歯が僕の口の中を転がる。
それを吐き出そうとするが、そこを殴られてつい呑み込んでしまう。
喉の奥を硬く小さな歯が転がっていく気持ち悪い感触。
さらに腹を殴られて、僕の胃が悲鳴をあげる。
喉の奥から先ほど飲み込んだ歯の欠片が嘔吐感と共にせり上がってくる。
僕は何とかそれをこらえ、耐える。
黒服たちは僕に隙をつかれ、サーバーを攻撃された事がそれほど悔しいのか、執拗なまでに僕を殴打する。
一応、わたに殺さないように言われているのだろうが、彼等の振るう警棒からは”生きていたら儲けものだが、死んでも別に問題ない”と言う程度の遠慮しか感じられない。
僕はこのまま本当にここで殴り殺されるのではないのだろうか?

だが、僕にはまったく悔いはなかった。
僕の心の中は誇らしい気持ちと充足感で一杯だった。

―――やってやった!!!僕はやつ等のサーバーをぶち壊してやった!!!

黒服たちは僕を止められなかった。
僕のサーバーへの攻撃を止められなかった。
僕は彼等の隙をついたんだ!
僕は勝ったんだ!!!

黒服達のふるう警棒は僕の麻痺した痛覚神経へと痛みと灼熱間を徹底的に叩き込もうとする。
だが僕は苦しくともなんとも無い。
なぜなら僕はやり遂げたからだ!
部屋の中に黒服たちの荒い息遣いと僕の断続的な苦鳴が響く。
だが僕の脳内でだけはファンファーレが鳴り響いていた。

―― ざまあみろ!!ざまあみろ、黒服!!!avex!!!
――― 勝ったのは、今僕を殴り転がしている黒服たちじゃない!!!
―――― 一瞬の隙をついてサーバーをぶち壊したこの僕だ!!!勝者はこの僕なんだ!!!!VIPなんだ!!!2chなんだ!!!

世界の全てが僕を祝福しているように感じた。
自分の人生がこの一瞬のためにあるような気がした。
自分の喉から漏れる苦鳴さえも、黒服たちの警棒が僕の肉や骨を打ち据える音さえも、僕への祝福に聞こえる。

だが、何時まで経ってもサーバーの破損によるページの崩壊やラグの発生が確認できない。
その事を疑問に思った僕は、殴られながらも顔を上げ、砲撃の煙にまみれたサーバーを見る。

やがて目の前のサーバーから、田代砲の砲撃によって生じた煙が晴れていく。
僕はそれを凝視する。
僕の思考が停止した。

――――目の前の円柱型のサーバーには、傷ひとつついていなかった。

脳内に響いていたファンファーレが止まる。

ああ、何てことだ・・・・。
元から田代砲一本ではサーバーには傷ひとつつけられなかったのか・・・・・・。
僕一人では何もできないのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

僕の表情が絶望に染まる。
目に入った黒服の一人が、そんな僕をみて満足げに嘲笑ったような気がした。

僕の目の前が真っ暗になった。

もはや今の僕に黒服たちの警棒による打撃の荒らしに耐えるだけの気力はなかった。

僕は意識を手放した。

 

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