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革命王子が手近な警備員に両手に握った骨を出鱈目に突き刺しまくる。
目や肺に穴を開けた警備員がしばらくビクビクと痙攣した後、絶命する。
何人かは発砲してくるが、その銃弾が地面に着弾する頃には革命王子の姿はその場から飛びのいている。
革命王子の動きは別段早いわけではなかった。
むしろ普通の人間やAAと大して変わらない。
だがどういうわけか、銃弾はその身にかすりもしないし、気がつけば警備員達は思いもしない角度から攻撃されていた。
革命王子自身も何か計算しながら死角に回ったり銃弾を避けているわけではなかった。

(こっちは方角が悪いな。向こうのほうが良さげだ。)
(ここからこの角度で攻撃すれば殺せそうだ。)

そんな漠然とした、ハッキリしない曖昧な感覚だけで動き回り、殺戮を続けていた。
直感だけで殺戮を続けて、どんな敵の攻撃からも生き残り続ける彼を、曖昧な感覚だけで人を殺し続ける彼を、見るものが見ればこう言うだろう。
「修羅道に堕ちている」と。 

(・・・・・・・・・・・ん?なんだコイツ?)

残った警備員達全員を骨二本で”解体”し終わった革命王子は、さっさと手に握った骨を捨てて、ゆっくりと包丁のAAを何本もタイプしていた。
かつて警備員達を構成していた”部品”がちらばる部屋の中で一匹のAAを見つけた。
どこかで見たことがあるそのAAの後姿を眺めていると、AAが振り返った。

革命王子「・・・・・モナー・・・・・・・・・・・ッ!!!!!」

革命王子は驚きに目を見開いた。
王子の目の前に居たのは、いまやavexの看板マスコットと化したAAののまネコ、いや、モナーだった。
だが、モナーは半年ほど前からぷっつりとメディア上から姿を消していて、革命王子自身もモナーを見るのは久しぶりだった。

モナー「・・・・・・・・・・・・・・」

しかし、どういうわけかモナーは視点の定まらない目で、いつもどおりの笑顔で笑い続けていた。
革命王子の驚愕など意に介さず、ひたすら手にした酒をぐびぐびと一気飲みしている。
その表情は相変わらずの笑顔だが、どこか2chで革命王子達が見かけていた頃のあの明るさや元気は感じられなかった。

革命王子「・・・・・・」

革命王子がモナーを注視していると、モナーの酒瓶を傾け続ける手が止まった。
その焦点の合わない目が唐突に革命王子を捕らえた。

一人と一匹の目が合う。

瞬間、革命王子の脳内に最大音量で鳴り響く危険警報。

革命王子「・・・・・・・・・・・・・ッ!!!!!」

モナーと目を合わせた時、革命王子は直感的に悟った。
こいつと自分は同類だ、と。
そしてモナーの方が自分よりもさらに”深い”事も。

気づいたときには革命王子は態勢を低くして、殆ど地面にしゃがみこむ。
瞬間、頭上を通り過ぎるガラスの酒瓶。
革命王子はしゃがんだ体制のまま、いつの間にか接近してきていたモナーへと包丁を突き上げるように刺しこもうとする。
だが、モナーが掲げた酒瓶に阻まれ、その包丁は酒瓶を割るにとどまる。
モナーはそのまま自分の頭より下にある、しゃがんだ革命王子の顔へと、割れて牙のように先端がギザギザと尖っている酒瓶を突きこむ。
革命王子は体制を崩して、転がりながらそれを避けると、転がりながらも包丁を振り回した。
革命王子の振り回した包丁は、モナーの持つ酒瓶をさらに短く切り飛ばし、モナーの耳を半ばほどまで切り裂いた。
だが、モナーは全く答えた様子は無い。

革命王子がさらに距離を取ろうと立ち上がって後退を始めた時、それがモナーの手から放り投げられた。
ふたが開き、火がついたジッポライターだった。

(なッ・・・・・・・・・しまった・・・・・・・・ッッッッ!!!)

革命王子は自分の体を瞬間的に見下ろして気がついた。
その体にはところどころに、モナーがまだ飲み終わっていなかった酒瓶の中身、酒が、モナーが割れた酒瓶を振り回したり革命王子が酒瓶を割った拍子に降りかかっていた。
とくに、モナーの握る酒瓶を割った包丁と、それを握る右手には、水をかぶったように酒が降りかかっていた。

革命王子はもはやなりふり構ってなど居られないとばかりに、モナーに背を向けつつ逃走を開始する。
だが、落ちてくるジッポライターの火が、右手を掠める。
革命王子の右手が燃え上がった。

革命王子は相手への牽制のために左手の包丁をすばやく投げると上着を脱いで、それで必死に右手の炎を消しつつ疾走していった。
左手から放たれた包丁は的確にモナーの顔面へと向かうが、モナーは酒瓶でそれをたたき落とす。

モナーが再び意識を革命王子へと向けた時、そこに革命王子の姿は無かった。 



 

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