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「大佐さん!!編成し直した混成中隊の半数が戦死、防衛ラインが崩れました!」

大佐がその無線を耳にした直後、大佐に向けられた敵の小銃の銃口につけたれたアダプターから擲弾が発射された。
ライフルグレネードだ。
大佐は右手の重機関銃で飛んできた榴弾を打ち抜き、空中で爆発させる。
敵の何人かは爆発に巻き込まれるが、後から後から増援が来るのであまり効果はなさそうだ。
だがその時、爆風が大佐の体勢を崩し、今まで軽快に両手の重機関銃の反動に乗って動いていたその足が、重機関銃の反動に耐えられずに転倒する。

大佐「・・・・・・・・・チィッ!!!」

大佐の顔には既に何時もの穏やかな微笑は浮かんでいなかった。
それは血と硝煙にまみれた、正義も悪もロマンも義理も夢も尊さもプライドも何も無く、ただただ不条理な死だけが転がる戦場で必死に戦い続ける一人の兵士。
そんな表情だった。

倒れた大佐に向けて、懐からナイフを握ったZENの黒服が襲い掛かってくる。
大佐は咄嗟に右手の重機関銃の銃身でそれを受け流し左手の重機関銃を倒れた姿勢のままで黒服の右側頭部に叩きつける。
鈍い音と共に黒服の頭蓋骨がへこむ。
だがavexのダミー会社でしかないZENの黒服達を殺すことは出来ない。
どれだけ攻撃したところで実体の無い者を倒す事は出来ない。
規制銃での”削除”を除いては。
大佐は今更ながらに、規制銃ではなく機関銃のAAを使っている事を悔やんだ。
しかし、機関銃のAAは自分のお気に入りだし、愛着もあるので仕方が無い、と割り切り、さっさと起き上がろうとする。
まずは重機関銃を掃射して倒れた自分に銃口を向けていたAA達を片付け、そのまま重機関銃を地面に向けて掃射。
反動で起き上がる。
それを狙い済ましたように、先ほど機関銃の銃身で頭を横殴りに叩き潰してやった黒服が起き上がり、ナイフを振るう。
だが、大佐の後ろから絶妙のタイミングで放たれた規制銃が黒服の心臓を貫いた。
大佐と共に敵と抗戦していた小隊の小隊長だった。
小隊長の規制銃で黒服は心臓に穴を開けられ、動かなくなる。

小隊長「大佐さん、もうここは無理です!!三階の情報室前までさがりましょう!!!」

小隊長が叫んだ。
大佐たちは既に二階まで追い詰められていた。
大佐と共に戦う小隊も、16名居たはずの隊員のうち9名が戦死していた。
大佐が如何に対集団戦に秀でていようと、重機関銃の掃射で敵をなぎ倒そうと、何時までも無限ともいえる物量で押してくる敵から防衛し続ける事ができるわけではない。
大佐はそれでも退こうとしなかった。

大佐「退けん!!俺達の負けはそのままVIPの消滅を意味するんだぞ!!!!」

小隊長「大佐さん、失礼します!」

小隊長と小隊の隊員が無理矢理大佐の肩を掴んで、二階と散会の間の踊り場までさがる。
その途中、大佐の肩に手をかけていた小隊の隊員の一人の頭が吹き飛ぶ。
さらなる増援が二階を目指して階段を駆け上がり、そのうちの手にしたライフルから硝煙が漏れていた。
敵の増援は留まるところを知らないようだ。

大佐「貴様・・・・・ッ!!!!!」

大佐の顔が怒りに歪み、ライフルを撃ったAA達を掃討すべく、重機関銃を持ち上げようとする。

小隊長「大佐さんッ!!!!」

それを小隊長が押しとどめ、二階と三階の間の踊り場をまがり、敵の銃撃から隠れる。
敵が二階に到達したのを見計らって小隊の生き残りたちが手榴弾型の削除デバイスを放り投げる。
爆音。
敵の増援部隊が完全に爆煙に呑まれて”削除”されていく。

小隊長「大佐さん、今ので規制弾は最後です。」

小隊長が言った。
大佐は肩で息をしながらも、無線機から入る報告に耳を傾けていた。

「こちら元第四砲兵中隊長!!!混成中隊の生き残りと他の混成小隊の生き残りをさらに再再編成しました、あと二十分でそちらの援護に向かいます!!!」
「こちら屋上の混成砲兵中隊!!!ダメです、連中の砲撃手の砲撃で、屋上から顔を出せません!!!」
「こちら情報室、裏口に取り残されていた混成小隊が全滅した模様!!さらなる増援がそちらに向かっていると予測されます!!!」

相変わらず無線機は自分たちに不利な報告ばかりを垂れ流す。
大佐は思わずため息をはいていた。

小隊長「まずいですね。」

小隊長が言った。
今、大佐と共にこの踊り場を守っているのは既に小隊の生き残りである6人だけだ。
その六人は誰もが傷つき、疲労していた。
再再編成された混成部隊が自分たちの援軍に向かっているようだが、先ほど裏口を突破したと言う敵の増援が来る方が早いだろう。
自分たちに勝機が無いのは明白だった。
大佐は死を覚悟した。

大佐「・・・腹をくくれ。」

小隊の生き残りの面々が無言で頷いた。

増援の物と思われる足音が二階まで上がってくる。

大佐は腰を落として何時でも飛び出せるようにすると、踊り場に近づこうとしている足音の持ち主たちの前に足のバネを使って飛び出す。
大佐はその集団に向けて銃機関銃を向けようとして、その動きを途中で止めた。

先頭の集団に居たのが女のAAで、集団のほかのメンバーも黒服やavexに権利を握られているAAではなく、名無しやコテ達だったからだ。
大佐は瞬間的に、自分が動きを止めてしまったことを後悔した。敵が黒服やAA達の集団で無くとも、敵ではないという確証は無い。
大佐に続いて姿を現した小隊の生き残りたちが動きの止まった大佐をフォローしようと銃を構えたとき、先頭に立つAAが笑顔で言った。


 

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