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フサギコの持った銃剣型の削除デバイスの剣の切っ先がギコさんを掠めた。
ギコさんは腹を軽く剣の切っ先に撫でられながらも何とかかわす。
しかし、フサギコは振るった銃剣をそのまま回転させ、逆手に握る銃剣の銃把でギコさんの頭を殴りつける。
ギコさんは規制銃の銃身でそれを受け止めようとするが、フサギコはあっさりと逆手に握られた銃把をい止め、そのままさらに体ごと逆回転、銃身に取り付けられた剣を突き刺そうとする。
だがギコさんはそれを読んでいた。
あせる事無く逆回転して一瞬だけ、ほんの一瞬だけだが確かにギコさんにむけて背を見せる形になったフサギコに左手の銃を照準する。
だが、間に合わない。照準はできても、引き金を退くのがフサギコとの接近戦の中では不可能だった。
ギコさんの銃は引き金をひく前にフサギコが両手で握る銃剣を前に押し出し、その拳銃を握る両手のちょうど真ん中部分の銃身に押されて照準をずらされる。
フサギコはさらにそこから右手だけを押し出し、銃把をギコさんの胸のあたりに叩きつける。
ギコさんがよろめいた隙に、フサギコは右手だけを突きだしたせいでフサギコの左胸の前に取り残される形になった左の手を、右手を突きながら突き出す。
今度は銃身の先の剣が再びギコさんを襲う事になった。
ギコさんは反射的に規制銃でその切っ先を受け止める。
フサギコはさらなる連撃を繰り出そうとするが、自分の右即頭部に鈍痛を感じてその場に停止。
ギコさんの左手に逆さに握られた銃の銃把が、いつの間にかフサギコの即頭部を殴りつけていた。
―――引き金を退く暇がないのならこっちも接近していって殴りつけてやれ、という事だろう。
ギコさんはフサギコがよろめいた隙にさっさと距離を取ろうとする。
だが、フサギコの銃剣の引き金にかけられた指が反射的に動いた。

銃声。
大きくその場を飛びのいたギコさんの肩口のすぐそばを弾丸が通り過ぎていく。
銃剣型削除デバイスから放たれた銃弾は、なんとかかわしきったにもかかわらず、衝撃に当てられたギコさんの肩口を浅く”削除”した。
そしてそのまま離れる二人の体。

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・・・・・」

僕は二人の戦いを目で追うのが精一杯で、「手を出さないでくれ」等といわれても、手を出す暇など無かった。
僕の隣で眺めているピストンも、ギコさんの頼みどおり、一切手を出そうとはしない。

銃から銃剣型の削除デバイスへと武器を持ち替えたフサギコはさらに強かった。
銃剣をまるで槍や薙刀を操るように、接近戦では銃把を、中距離戦では銃身に取り付けられた剣を、長距離になれば銃撃を、体ごと回転させるような動きを取り入れて見事に使い分けていた。
フサギコによって銃剣は近距離、中距離、長距離と全ての距離で相手に理想的な攻撃方法をもった完璧な武器と化していた。
しかも、フサギコはどういう嗅覚をしているのか、匂いで周りの物体や動きを把握しているので、相手を視認しようとせずに思うがままに銃剣を振るったり相手に一瞬だが背を向ける事になるような回転ができるのだ。
戦況はギコさんが不利だった。 

フサギコは右即頭部から血を滲ませながらも、一向に衰えない鋭い眼光を放ちながらギコへと接近しようとする。
ギコはバックステップで後ろに下がって距離を稼ぎながらフサギコに銃の照準を合わせようとする。
ギコは距離を稼ぎながらも頭の中で冷静にフサギコに打ち勝つための戦術を模索し続けた。

(ヤバイな、ヤツの銃剣の剣が届く距離に近づかれたらまたあの連撃が来る。なんとしてでも距離を稼いで―――)

ギコが距離を稼ごうと後ろに下がり続けるのを見てフサギコは銃剣の銃口から弾丸を発射する。

(――――と、普通は考えるだろうな。)

転瞬、バックステップを踏んでいたギコの足が唐突に停止、そのまま思い切り地面を踏みつけて、銃剣を構えて発砲したフサギコの懐にもぐりこむ。
態勢を低くしてフサギコの懐に潜り込もうとするギコの頭上を削除デバイスの銃弾が通り過ぎ、ギコの頭の毛を数本”削除”する。
狙いをつけるために銃をギコに向けて縦に構え、左手が伸びきっているフサギコの懐にギコが入り込んだ。
しまった、とフサギコが思い、急いで引き金にかかっている指を外して銃剣を握りなおそうとするがもう遅い。
ギコの規制銃を逆手握る腕(――普通に照準をつけて銃を撃つ暇などない)がフサギコの顔面めがけて突き出される。

フサギコ「ぐ・・・・・・・ッ!!」

ギコの規制銃の銃把がフサギコの鼻へと叩きつけられる。
それはフサギコの鼻っ柱をへし折り、鼻腔から血を噴出させた。
フサギコは急いで接近してきたギコへと銃剣の銃把を叩き込もうとするが、ギコはあっさりとその間合いから外れてしまう。
フサギコは間合いから外れたギコを追おうとするが、その銃剣を振るおうとする前に、ギコはさらにその銃剣の届く間合いから外れてしまう。

―――血の匂いしか嗅げねえ!!!!!!!

フサギコは頭の中で怒りと共にそう叫んだ。
ギコによって鼻を潰されたフサギコの鼻腔は血にまみれ、それ以外の匂いなどまともにはかげなかった。
なんとか目でギコを追おうとするが、匂いで敵の動きを読む事に慣れすぎてしまった今のフサギコには、十分な間合いを測ることも即座に敵を追うこともできなかった。
また、無意識に嗅覚で敵を追おうとしてしまうため、血の匂いで曖昧にしか測れない敵との距離感が、さらに視覚による追跡の妨げとなった。
相撲で言えば、今のフサギコは完全に”死に体”だった。

気づけばギコの規制銃がフサギコの後頭部に突きつけられていた。

ギコ「諦めろ。鼻を失くしたお前にもう勝ち目はない。」

ギコが静かに言う。

フサギコ「諦めろ、だと? 2chを諦めさせられ、avexで酷使され続ける事を受け入れさせられたこの俺に、さらに命まで諦めろというのか?」

その顔に死への恐怖はない。
純粋な怒りだけが合った。
ギコに対してか、avexに対してか、はたまた自分自身に対してか。
それは何に対しての怒りだったのか・・・。
当のフサギコ自身にもわからなかった。

フサギコ「ふざけるな・・・・・ッ!!」

振り向こうとギコに即頭部を向けたところで、その即頭部をギコの規制銃が打ち抜いた。
2ch内でないために十分に威力を発揮できないその弾丸は、弾丸に触れた部分だけを綺麗に”削除”した。
フサギコの即頭部に、向こう側が見渡せる程の綺麗な穴が開いた。

フサギコは振り向こうと体を動かした勢いのまま、回転してその場に倒れた。
もう動く事はなくなったその手から、銃剣型の削除デバイスが転げ落ちて地面に音を立てる。

ギコ「・・・・・・・・・・・・」

ギコは目の前でまた昔の親友を失くした。
今度は自分の手で殺したのだ。

ギコの目からはもう涙は出なかった。 

( ^ω^;)「・・・・・・・・・」

僕とピストンは唖然としていた。
ギコさんは今まで追い詰められていたのが嘘だったかのように、一瞬の、それこそ本当に一瞬でしかなかったフサギコの隙をついてあっという間に勝利を掴んでいた。
距離をとろうと逃げ続けて、追い詰められていくだけだと思っていたギコさんが、あのフサギコのあらゆる距離をカバーしていたかのような絶対の攻撃を突き崩して、
鼻を潰していた。

目でその姿を追うのが精一杯だった僕と、ギコさんが殺されそうになった時のために特殊警棒を抜きかけていたピストンが目を大きくしてギコさんを見つめ続けていた。

やがてギコさんが僕らへと近づいてくる。
かつての親友をあっさりと射殺したその表情には何の感情も浮かんでいなかった。

( ^ω^;)「ギコさん・・・・・・・・・」

僕は思わずギコさんの名前を読んでいた。

ギコ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ギコさんは答えない。
場に静寂が流れる。
だが、その静寂は不意に破られた。

ガシャン、と何かの割れる音。
しばらくして、こちらに向かってくるギコさんの体が地面にしゃがみ込み、膝をついた。
ギコさんの後ろに、AAが居た。
その右手には立った今ギコさんを後ろから殴りつけたのであろう、割れた酒瓶。
最初から割れていたのであろう酒瓶には酒は入っておらず、そのAAの掴んでいる細くなっている部分を除いて殆どが砕けて床に散らばっていた。
そのAAが純粋な、感情の無い、どこか空虚な笑いをみせた。
モナーだった。

 


 

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