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「やっほー。大佐、久しぶり。まだ死んでないみたいでよかったよかった。」

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・?)
大佐は突然笑顔で話しかけてきたそのAAの声をどこかで聞いたことがあるような気がしながらも、握った機関銃を何時でも狙いをつけて撃てるように警戒を緩めない。
その、警戒心丸出しな大佐の様子を見て集団の先頭に立つ女のAAが眉をしかめる。

「あれ?大佐、しばらく会ってないうちに運営の仕事が忙しくてなっちゃんの事忘れちゃった?」

そこまで言われて大佐はそのAAの正体を理解した。

大佐「・・・・・・・・夏実?」

夏実というのはかつてVIPに居た、大抵の場合AAと共にレスをするコテの事だ。
VIPから出て行った後も何度かVIPに姿を現していたが、VIPが過疎板に落ちぶれてしまった後はVIPを覗く事すら無くなっていた筈だ。

夏実「気づくのおせーよ。せっかくVIPがavexと戦ってるって聞いて飛んできたのに。」

大佐の疑問符のついた呟きに、女のAA―――AAを使ってのみ顕現するコテ、夏実が使うAAと口調を同時に変えて返事を返す。

夏実「気に入らないavexにVIPの連中が一矢報いようとしてるっていうから皆で来てやったぞ。」

どうやら夏実が先頭に立つこの集団は、他板から来た夏実の取り巻きのコテや名無しらしい。

大佐「助けに来てくれたのは嬉しいが、今回ばかりは分が悪い。敵の数が多すぎる。」

大佐が苦々しげに言った。
大佐の言うとおり、夏実達が援軍に来てもavexの圧倒的な物量が相手では、戦況はまったく動かないだろう。

夏実「言っとくけど、援軍は私だけじゃないよwww」

と、またAAと口調を変えて、夏実が踊り場に取り付けられた窓に近づき、外を指差しながら言った。

大佐「おいおい、迂闊に窓に近寄ると狙撃さ・・・・・・」

狙撃されるぞ、と続けようとした大佐の台詞が止まった。
外にはavexの大包囲網が敷かれているのだが、その包囲の一角を、黒服やAAをなぎ倒しながら突破し、VIP運営陣の建造物に近づいてくる一団があった。
その集団はコテや名無しで構成されており、名無し達を見る限りはあちこちの板の名無しが集まった集団らしい。
そして、大佐はその集団に混じっている、知ったコテを発見した。

大佐「真・VIP無双・・・・・・・」

大佐がそのコテの名を呟く。

夏実「いやいや、みんな、なんだかんだ言ってもVIPが懐かしくて仕方なかったみたいね。「調子に乗ってるavexに一発ぶちかまそうよ!」って、ちょっと発破かけてやったら喜んで話しに乗ってきたわよ。」

やがて包囲網を抜けたコテや名無しの集団は、正面玄関の黒服やAAを押し退けながら構造物内に入ってきた。
その数は300人はくだらないだろう。

大佐「これでまだまだ戦える・・・・・・・・、か。」

大佐がどこか安堵したように言った。
avexの方も、既に大佐の部下の半数以上を戦死させていたのだが、包囲を張っている部隊以外の、侵入部隊も手痛い被害を受けていた。
今のコテや名無し達の乱入でその生き残りもほぼ掃討されただろう。
近いうちに包囲をしている部隊が突入してくるだろうが、その時が勝負だと大佐は睨んだ。
数の差はまだ圧倒的だが、大佐の残存兵力と新たに来た援軍を合わせれば十分に正気はあるだろう。
大佐は疲労を感じさせない力強い足取りで階段を降り始めた。
一階には、夏実達が始末したと思われる敵のAA達の死体が転がっていた。

夏実「本当はさ、いざという時にVIPを捨ててあちこちに散った名無しやコテ達に連絡をつけて、決起できるようにしておいたのは讃岐なんだ。」

大佐の後に続く夏実が唐突に話しかけてきた。

夏実「讃岐はさ、いつか運営でのし上がって2ch運営陣を掌握して、avexの圧力から2chを解放する日までは、手段は選ばないって言ってたよ。
   汚い事でも酷い事でも何でもして、嫌われようと憎まれようと2chに伸びているavexの手を完全に遠ざけるって言ってた。」

その声は悲しみと郷愁に満ちていた。

夏実「讃岐は行方不明になっちゃって、今回の決起に参加してないけどさ、そのうちひょっこり出てきて、今回の決起に参加できなかった事をすごい悔しがるだろうな・・・。」

大佐は夏実のその顔を見て夏実の内心を僅かながらも理解した。
おそらく夏実自身、VIPの運営を任されてちゃくちゃくと運営内での地位を固めてきた讃岐が、急に行方不明になって一切運営の仕事や連絡をしなくなった事がどういう事かわかっているのだろう。
理解したうえで、願うように「ひょっこり出てくる」と言ったのだ。
楽観的予測からではなく、祈りからくるレス。
大佐も行方不明になった、運営陣に同期で名を連ねる事になった讃岐を思い、悲しげに目を伏せた。

やがて正面玄関の敵を掃討した他板からの援軍が大佐の目の前までやってきた。
何人かは負傷しているが、全員が楽しそうに笑っていた。
恐怖など微塵も無く、ただただ、avexに一泡吹かせてやろうと悪戯を画策する子供のような顔をしていた。
それを見て大佐は思った。

VIPはまだまだ大丈夫なようだ。


 

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