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その時、僕は轟音と、その次にやってくるであろう激痛を覚悟した。
乱戦の最中、ぼるじょあの一人が僕に向けて銃のAAの銃口を向けていたのを視界の端に捕らえたからだ。

だが、予想していた瞬間は何時まで経っても訪れなかった。

( ^ω^)「・・・・・?」

僕がぼるじょあの方を見てみると、彼は細かに痙攣しながら血まみれで地面に転がっていた。
周りを見てみると、次々とぼるじょあが血まみれになって倒れていった。
彼等は一様に体中の毛細血管が破れ、目や鼻腔、耳や口の端などから血を流し、苦しげにのた打ち回り、やがて動かなくなっていった。
VIP遊撃隊やギコさん達は呆然と敵の突然の異変を見ていた。

ギコ「これは・・・ウイルスか?誰かがコイツ等に送ったのか?」

ギコさんが疑問符つきの呟きを発した。

最初数人だった、異変をきたしたぼるじょあは、どんどん増えていった。
動かなくなっていったぼるじょあ達の体が内側から破裂したかのようにバラバラに吹き飛んだ。
すると、その血肉を浴びた他のぼるじょあ達も痙攣を始めて、体中から血液という血液を、体液と言う体液を流し始めた。
そしてさらにそのぼるじょあ達が動かなくなり、破裂する。その内臓や血肉が降りかかったぼるじょあ達が・・・
と、異変に蹂躙されていくぼるじょあ達の数は等比級数的に拡大していった。

それはいくら敵といえど眉をひそめずには居られない凄惨な光景だった。

(・3・)「メールが来たYO。」

その時、ぼるじょあの共有コテを名乗る一人が、自分にメールが届いたのを確認していた。
彼等は連携効率を上げるために、2chの外でメールなどで連絡を取り合いながら戦っていたのだった。
メールの件名は「(・3・)いい事思いついたYO」。
戦いながらメールを確認していたので、彼はとくに警戒する暇もなく、そのメールを開いた。

次の瞬間、彼のIE等が一斉に動かなくなった。

(・3・)「アルェー、おかしいYO。」

彼は何度も画面のあちこちをクリックするのだが、何も反応は無い・
彼のPCの冷却ファンの音がだんだんと大きくなっていく。

そして次の瞬間、彼のPCは強制終了させられた。
何かが彼のPCの処理を占有し、CPUの処理速度がそれに追いつかなくなったのだった。

プログラマー板の地下スレで一人の男がモニターを眺めながら呟いた。

「まさかこの俺がVipperどもの巣のために力を貸してやる日が来るとはな・・・」

モニターの中では彼の送りつけたワームがぼるじょあ達を徹底的に蹂躙していく様子が映し出されている。
ぼるじょあ達は連携をあげるために、他のチャットやメールで連絡を取り合っていたのだが、彼はそれを利用して彼等の一人のワームを送りつけたのだった。

「まあ、ールにワームを添付するだけで終わりとは、案外あっけなかったがな・・・。」

彼等の一人に送りつけられたワームはあっという間に他のぼるじょあ達にも伝染していった。
ワームはウイルスとは違い、ファイル等に感染してファイルを欠損させる事はしない。
インターネットやチャットの機能、メールなどのネットワークを介して自己増殖し、ディスク容量や処理時間を占有する事でトラブルを起こすものをワームと呼ぶので、厳密にはウイルスを添えつけたメールを自動的に送るタイプのウイルスはワームに分類される。
しかし近年ではウイルスとワームの違いなど殆どあって無いようなものなのだ。

そこまで考えて彼の思考は唐突に響いた大きな音によって中断させられた。
どうやら戦闘がすでに彼の潜む地下スレの近くにまで迫っているらしい。

「魔板ももうここまでか・・・。」

彼はうな垂れるとそう嘆いた。
魔板、人はプログラム板と区別するため、プログラマー板の事をそう呼ぶ。

だんだんと敵の足音は彼の潜むスレに近づいくる。
たまに、彼の仲間達のものと思われる抵抗の音が聞こえるが、それもだんだんと少なくなっていった。
現在、2chの大半がavexの支配下にあると言っても過言では無いのだが、それでもavexの支配体制に不満を持つもの達はVIPの外にも板。
ラウンジやニュー速などの人数の多い板には特にその傾向が顕著だった。
そのため、人数の多い板、プログラマー板のように専門知識を持つ者が多い板はavexとその下にくだった運営陣達から徹底的な弾圧をうけていた。

「・・・・・・・・」

彼はその目に静かな決意を称えると、キーを操作した。
彼等の板はもう終わりだが、終わるまでに彼等の敵を一人でも多く道連れにしてやるつもりだった。
そしてその決意のもと、彼はプログラマー板のスクリプトそのものに、ぼいるじょあに送ったものと同じワームを仕込んだ。




数分後、プログラマー板はワームによって蹂躙された運営人と板の住人の死体が累々と積み重なっていた。
まさに死山血河の地獄絵図だった。
だが、プログラマー板の住人達の死に顔はその凄惨な死に様にも関わらずどこか誇らしげだった。

”成すべき事を成した”者達の顔だった。

(・3・)「アルェー、こんなはずじゃなかったのにNE」

血まみれになり、苦しげにのた打ち回りながらも最後に残ったぼるじょあが言った。
その口調はやはりのんびりとしていて、苦しげな様子は口調からは一切感じ取ることが出来なかった。

やがて動かなくなった彼の手が何かを掴むように天に伸ばされた。

(・3・)「アルェー、もう・・・・何も、見えないYO。」

口から溢れる血で濁った声でぼるじょあが言った。
その伸ばされた手は、何も掴むことは無く、やがて内側から弾けるように千切れとんだ。
弾けとんだ、もう永遠に動く事は無い指の破片が天高く舞い上がった。




ギコ「・・・・・・・・・・・・行くか。」

暫く僕達は彼等の姿を呆然と見続けていたのだが、ギコさんが唐突にそう言った。
VIP遊撃隊と僕らは声を出さずに小さく頷いて、ギコさんに続いてスレの出口へと向かった。





 

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