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ぼるじょあは死んだ。ぼるじょあは”終わってしまった”。どうしようもないほどに”終わってしまった”。
だが、僕らの戦いはまだ終わっていなかった。
スレから出ると、ギコさんが急に足を止めた。
ギコさんの顔には明らかな狼狽が浮かんでいた。
僕がギコさんの視線の先を辿ると、そこにはコピペで増えたのだろう、大量のビーグルと共に二人のAAが居た。
ギコ「しぃ・・・・、モララー・・・・・。」
ギコさんが乾いた声で呟いた。
ギコさんのその声にはどうしようもないほどの哀愁が篭っていた。
しぃ「ギコくん、久しぶりね。酷いじゃない。ギコくんがタカラにさらわれそうになった時は助けてあげたのに。私の時は助けてくれなかったのね。」
しぃと呼ばれた猫のAAが可笑しそうに、心底可笑しそうに冗談めかして言った。
その笑みはギコさんに親しげに向けられていたが、端々から毒のような悪意が漏れていた。
僕はその笑顔を見たとき一つの感想しか浮かばなかった。
すなわち―――”壊れている”と。
モララー「やぁ、ギコ。avexに持ってかれたときはどうなるかと思ったけど、avexのために働くのも悪くないよ。」
モララーと呼ばれた、常に顔に笑顔を貼り付けているようなAAもギコさんに話しかける。
ギコさんと二人のAAは旧知の間柄らしい。
モララーの笑顔は先のしぃとは違い、本当に喜色に満ちていた。
だが僕は彼の方がしぃ以上に”壊れている”のではないかと感じた。
彼の口はつりあがって、鋭角的な笑みの形に固定されているが、目だけが笑っていないように思えた。
・
モララー「なにせ、こういう形で合法的に虐殺ができるからね。いやね、avexのために笑顔ばっかり貼り付けて働いてるとストレスたまっちゃってね。」
モララーが続ける。
モララー「昔はさ、虐殺するとゴチャゴチャゴチャゴチャ言ってくる輩が居たけど、今回みたいなのなら、avex様様が後ろについててくれるからね。それに――」
どんどんと彼の笑みは深くなる。
だが目は全く先ほどから変わっておらず、不気味さを周囲に振りまいていた。
モララー「―――それに一度君もバラしてみたかったんだよね。」
ギコさんの手が震えていた。
怒りのためなのか、悲しみのためなのか僕にはわからない。
モララー「オラ、何時までもボーっとしてねーでさっさとあいつ等とっ捕まえろ!!」
モララーが包丁のAAを握った手を振り上げてビーグル達に命令した。
モララー「てめーら糞の役にもたたねーんだからせめて俺の思ったとおりに動かねーか!!!」
言うが早いがモララーは手近なビーグルの一匹を手にした包丁で突き刺した。
ビーグル達はこれ以上刺されてはたまらんとばかりに僕たちに向かって疾走を始める。
しぃ「なんかね、この子、山崎渉に何かあったらしくて、私たちに何か伝えようとしてるんだけど、ホラ、この子、同じ台詞しか言わないでしょ」
しぃが疾走を始めたビーグル達を見ながら優しげな口調で言った。
しぃ「でも、モララーくんも殺すのは敵だけにしてね」
・
その台詞を合図にモララーとしぃも僕らの方に向かってきた。
しぃは身軽なその体を活かしてあっという間にビーグル達に追いつき、先陣を駆けていく。
しぃのその両手にはぼるじょあが持っていたのと同じタイプの銃のAAが握られていた。
対する僕たちはぼるじょあとの戦いで万全とは言えない状態だった。
特に、真っ先に突撃してわが身を省みず敵を切り続けたVIP遊撃隊の面々は満身創痍とも言える状態だった。
だが、彼等は退かなかった。
彼等はむしろその顔に笑みを浮かべてビーグル達を迎え撃つために突撃して言った。
( ^ω^)「待ってくださいお!無闇に突撃しても無駄死にするだけですお!!」
僕は咄嗟に彼等に向けて叫んだ。
遊撃隊「俺達はもはや死人だ。VIPがこんな風に”終わっちまった”時から、俺達は死んだ。」
VIP遊撃隊の内の一人が振り返って僕に言った。
遊撃隊「だが今、俺達は戦うことで昔のVIPを取り戻せるかもしれない。わけのわからないうちに”死人”になっちまった俺達が、ちゃんとした”死に場所”を見つけられるかもしれない。」
彼はその後も何か続けたが、疾走して遠ざかっていく彼の言葉は僕にはもう聞こえなかった。
彼等を見て僕はある一つのフレーズを思い浮かべた。
”死ぬことと見つけたり”。
VIP遊撃隊達に続くように、ギコさんが一歩前に出た。
その手には規制銃。
・
ギコ「『━━━━』、コイツ等が優先的に狙ってるのは俺だ!お前達は俺が時間を稼いでる間にここから逃げろ!!!」
ギコさんが周りの騒音に負けないように声を張り上げて僕に向けてそういった。
( ^ω^)「わかったお!!でもギコさんも死なないように気をつけるお!!」
僕も負けじと声を張り上げて答えた。
僕達はその場からさっさと離脱した。
後ろから戦場の怒号と断末魔の叫びが僕の背中に突き刺さる。
だが僕は振り返らなかった。
振り返ればギコさんを置いて先に行くことなど出来なかったからだ。
僕は自分の無力感を噛み締めて、自分を殺してやりたくなった。
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