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僕たちがアジトにしているいくつかのスレの内のひとつに潜んでいる時、ギコさんがそのスレに帰ってきた。
体にいくつか傷を負っていたが、特に問題は無いようだ。
僕は思わず聞いていた

( ^ω^)「あの人たちは・・・、あのAA達はどうなったんですか?」

僕は言ってからしまったと思った。
昔の知り合いと、同じ釜のメシを食らった仲間とたたかって、辛くないわけ無いではないか。
僕は自分の無神経さを呪った。

ギコ「・・・・・・・・・・ケリはつけたよ。」

だが僕の問いに対してギコさんは一切表情を動かさず無表情で言った。

ギコ「死んだよ、二人とも。」

僕は「ギコさんが殺したのですか?」「VIP遊撃隊のみんなはどうなったんですか?」と聞こうとしてやめた。
ギコさん一人がここに帰ってきたのが全ての答えだったし、何よりもそれは僕達が無闇に踏み込んでいい記憶では無い様に思えたからだ。

だが、そうは納得できず、ギコを興味深げにジロジロと見るコテが居た。馬愚那だ。

何時の間にかまた顔をかえて僕の後ろに回っていた馬愚那が僕の首根っこをつかんで僕を持ち上げる。
その姿はちょうど、等身大の人形を抱えた腹話術師のようだった。

馬愚那「おじいさんが言ってました。人形遣いは人間使い
     腹話術は読唇術。真似るのは声色だけでなく、そのうちなる声。」

まったく声色と声の調子を変えて馬愚那が言った。

馬愚那「さぁ、『━━━━』、被害者(ギコ)になるのです、被害者(ギコ)の肉声で彼の心理を再現してください。」

また芝居がかった口調でそう続ける。
僕はどう返していいのか分からず、ただ首をかしげて馬愚那を見上げた。

馬愚那「なんだよ、ノリの悪いヤツだな。『あやつり左近』見てねーのかよ。何様だ。死ねよ糞ハゲ。」

声の調子と顔をを何時もの物に戻して、まるで「こんな世界の常識を知らないお前は人間のクズだ」とでも言いたげな視線で僕を見る。

( ^ω^)「・・・・・・・・」

僕は何故彼がVIPで嫌われていた理由が少しわかった気がした。
しかし感情が篭っているのは馬愚那の視線だけで、彼は相変わらず無表情の少しだけ陰気そうな顔だった。
まるで自分以外の全てがどうでもいいとで言うような。

ギコさんはそれ以来表情をあまり動かさなくなった。
馬愚那はある日唐突に居なくなった。
後に僕の背中に「神様を探してきます」との書置きが貼ってあるのが見つかった。

VIP遊撃隊が死んだ。
僕たちの仲間も何人も死んだ。
僕達は少しずつ追い詰められているだけなのではないだろうか。
僕はそんな漠然とした不安を抱えながら今日もVIPの中を歩く。
スレの住人達は相変わらずの無気力なのが殆どだった。
けれど僕たちは歩く。
何時の日かVIPの住人達が、気力と気概を取り戻すことを祈って。
VIPが昔の栄光を取り戻すことを祈って。

だから神様、お願いです。VIPを見捨てないでください。。

僕は何処にいるのか分からない神様に陳腐な、だがどこまでも純粋な祈りを捧げた。
激戦地となり、多くの死者が出たであろうあのスレを飲み込んだDatの海はやはり今日も真っ暗で底が見えなかった。
その暗闇が「神など居ない」と僕をあざけっているように思えて、
僕はそれを振り切るために走り出した。
両手を水平に広げて思い切り走り抜けた。

肩を切る風に、希望を感じた。


     第二部・完





 

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