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VIP運営陣・本営。
その執務室に一人の温和な雰囲気を持つ男が執務机の椅子に座っている。
超絶の追跡・捕縛の途中で消息を立った讃岐に変わってVIPの運営を任されることになった元VIPのコテ、「大佐は疲労困憊」だった。

大佐の目の前には二人の女が立っていた。
Flash板の職人達を束ねるFlash50と、世間ではavexのクリエイターとして有名なわたであった。

悩むように両腕を机の上で組んでいる大佐が眉間に皺を寄せて言った。

大佐「つまり、今日から実質VIPの運営方針は全て貴方がたが決めると言いたいのかな?」

Flash50は馬鹿にするように口の端を歪めて、わずかなあざけりと共に言葉を吐き出した。

Flash50「言いたいんじゃなくて言ってるんです。Flash★Bomb 2007に参加予定の職人もVIPで一人行方不明になってるんですよ。」

Flash50は続ける。

Flash50「それに、貴方は昔のお友達たちに随分と甘いみたいですから。」

(―――それが本音か、売2ch奴の守銭奴どもが。)
穏やかな笑顔の下で大佐は思った。
恐らく、大佐や讃岐などのVIPにゆかりのある者ばかりがどんどんVIP運営陣に加えられていくのは、元VIPのコテである彼等に現在の住人達が衝突するのを躊躇うと踏んだためだろう。
大佐が深く眉間に寄せた皺の奥でそのようなことを考えていると、突然Flash50の隣にいた太り気味の女がヒステリックに喚いた。

わた「いいから早く私のブーンやギコを捕まえてくださいよ!!彼等も次のFlash★Bomb!に出演させたいんですよ!!!!」

それを聞いて大佐は思わず怒鳴りそうになった。
(――――『わたしの』だと!!!??? いつから貴様の物になった!!!?? 才能も何も無いピザ女が2chのAA達を売ってクリエイター気取りか!!!!! )

今やFlash★Bombはavexというスポンサーを得て、10万人近くが訪れる巨大イベントになっていた。
モナーが”インスパイヤ”されて権利をavexに毟り取られた当初、2chとの繋がりを捨てて、Mixiでの繋がりが深い彼女たちFlash職人はわたを庇う事を優先した。
一部の2ch住人は彼等がわたを諌めたり、止めてくれたりすることを願って、彼女達に「わたを止めてください」わたと「同じFlash職人の貴方たちからavexに抗議してください」と頼みもしたのだが、
Flash住人達は「わたさんはみなさんが思っているほど悪い人じゃありませんよ^^」だの「今みなさんがわたさんについて抱いている印象は2chで操作された物なんです^^」と、論点のずれた擁護を繰り返すのみだった。
そして、Flash50等は「わたが一方的にavexに利用された、被害者はわたニダ」と主張していたのだが、それから一年ほど経ってavexが2chの殆どのAAの権利を手に入れたとなると、あっさり彼等に寝返って、avexを自分たちのイベントのスポンサーにとりつけた。

だが現実の彼はここで怒鳴って彼女たちの機嫌を損ねても何にもなら無い、と少し困ったような笑顔の下に本音を隠して答えた。

大佐「すいませんね、目下創作中なんですけどね。連中、隠れるのと逃げるのだけは妙に上手くて。」

するとニヤリと笑ってFlash50が言った。

Flash50「だから今日は素敵な援軍を連れてきたの。」

Flash50が「入ってきて」と言うと、執務室の扉を開けて今までAvexに取り上げられていったAA達が部屋に入ってきた。
大佐の驚きに構わずにわたがFlash50の台詞の続きを言った。

わた「私の作ったavexの素晴らしいキャラクター達が、きっと連中を捕まえてくれるわ。」

大佐は今すぐこの場で規制銃を振り回して撃ちまくってやりたい程の怒りを覚えた。
今やavexは2chのAA達の商業化の権利を一手に握った超巨大企業となった。
その可愛らしかったり、奇抜な2chのAA達はavexに商業化されて一気に知名度が上がり、AAはあちこちで使われ始めた。
さんざん金儲けに利用したそのAA達を今度は同じAAであるブーンやギコを捕獲するのに使おうと言うのだ。
大佐は心のそこで烈火のごとく怒った。
ニュー速の記者となり、そこから実力を認められて2chの運営陣に入った彼は、VIPの運営を任された今でも心のそこではVipperのままだった。
柔和な雰囲気で仕事をこなすその裏側で、彼は未だにあのVIPで馬鹿をやったり、コテ同士で馴れ合い、時にはそれを叩かれたりした頃から変わっていない、一人のコテだった。
だからこそこの非道が許せなかった。

(―――常に戦わされ、血を流すのはダミー会社や同じVipper、同じ釜のメシを食らったAA同士だ・・・・。)

Flash50をわたの去った執務室の中で、彼は静かに天を仰いだ。

(―――avexは我々が思っている以上に、ずっと狡猾で、悪辣だ・・・。)

執務室の天井の、きれかけた蛍光灯が数回、点滅した。

(そろそろ代わり時なのかもしれんな・・・あの蛍光灯も、俺自身も・・・。)



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