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ビーグルやしぃ、モララーから逃げ出した僕達は、アジトとしているいくつかのスレの一つを目指して手近なスレに逃げ込んでいた。
そのスレに居た数人の名無し達は突然血まみれでスレの中に入ってきた僕等をみて驚いたが、すぐに無関心な表情で雑談に戻っていった。
僕らは彼等が騒ぎたてなかった事に安心しつつも、彼等の無気力さにどこか虚しさを感じていた。
だが、僕らはそう長く感傷に浸っていられなかった。
突然、スレの入り口から十数人の削除人と、四人のコテが入ってきた。

「ここに手配中の犯罪者どもが逃げ込んできているハズだ!探し出して捕らえろ!」

先頭に立っていた男が命令した。
僕らは急いで物陰に隠れた。
彼をみて騎士さんが言った。

騎士「今叫んだのは讃岐親衛隊だな。讃岐の取り巻きの一人だ。何度かふざけてあのコテを名乗っているのを見たことがある。」

騎士さんは続けた。

騎士「ヤツは心底から讃岐に心酔していたからな。讃岐が行方不明になって、俺達を疑っているんだろう。」

僕は讃岐が超絶に殺されていることを知っているが、どうしてだかその事を他人に喋る気にはなれなかった。

騎士「他の三人のうち、一人は『大佐は疲労困憊』、今のVIPの運営を任されている2ch運営陣の一人で、ついでに言えば元VIPのコテだ。」

騎士さんは大佐とは面識があるらしく、大佐を見たとき、その顔には郷愁のような表情が浮かんでいた。
大佐はこの場にまったく似つかわしくない温和な雰囲気で、讃岐親衛隊を少し苦々しい表情で見ていた。

騎士「残りの二人のコテはよく知らんが、見覚えはある。おそらくフラ板のコテだろう。奴等と居るって事はavexに尻尾振ってる職人連中だろうな。」

僕が騎士さんの説明に耳を貸していると、彼等はスレに居た住人達に声をかけ始めた。

讃岐親衛隊「おい、お前等、ここに逃げて込んできた連中は居なかったか?」

だがスレの住人達は削除人達を見ても無気力なままで、ある者はぼーっと眺めるだけだったり、ある者は無視して雑談を続けたりしていた。
僕には、彼等が”終わってしまっている”事が逆に僕らを助けているこの状況はなんだか皮肉めいて思えた。

そんな時、名無し達の一人が彼等に近寄っていった。

「あのですね、ちょっと見せたい物があるんですが・・・」

僕たちは一斉に身をかたくした。
騎士さんは何時でも飛び出せるように、その重心を低くして身構え、腰の剣に手をかけた。

だが、僕たちが危惧した事態はあっさりと回避された。
その名無しの次の行動によって。

職人「なんだ、何か奴等の痕跡でもあるのか?何を見せたいんだ?」

その名無しにFlash職人の一人が近づいていくと、名無しは僕には視認で着ない速度で彼の顔の前に右手を突き出す。
右手に握られているのは、銃のAA。

「神様」

名無しの短い返答とともに銃声が響いた。
それほど口径が大きくも無いが、小さくも無い、そして人を殺すには十分すぎる威力を持った弾丸が、フラッシュ職人の頭蓋を叩き割って脳みそをかき乱し、また頭蓋骨を突き抜けて後頭部から飛び出した。
撃たれたFlash職人は数回体を痙攣させて地面に倒れこみ、動かなくなった。

「まあ、神様が本当に天国に居たらの話だけどさ、そこまで責任は持てないよ。切符はあげたんだからあとは自分で探してね。」

削除人達は事態についていけず呆然としていたが、名無しのその台詞に我に返って銃の照準をその名無しに合わせる。

讃岐親衛隊「貴様!!!!武器を捨ててその場に伏せろ!!!」

讃岐親衛隊は銃を構えてその名無しを睨みつけながら声を張った。
その声は怒りと驚きで抑制が効かなかったのか、かなり大きく響いた。

「いきなり第一声で『伏せろ』とは何事ですか。僕をひざまずかせようとは、てめぇは神ですか。」

十以上の銃口を向けられながらも名無しが全く動じずに淡々と言った。

讃岐親衛隊「何者だ貴様は!この辺じゃ見ないヤツだが、新参か!!?」

讃岐親衛隊が高圧的に怒鳴って返した。

「僕はてめぇが神かと聞いてるんですよ。初対面で僕にひざまずかせようとするだけでなく、この僕の質問を無視し腐って逆に質問してくるとは、てめぇは随分偉いんですね。やっぱ神ですか、てめぇは。」

まったく感情の起伏を感じさせない声色と、呟くような調子で名無しが言った。
台詞の不気味さと共に名無しから圧倒的なまでの威圧感がにじみ出る。
そのふいんき(←何故か変(ry )からは讃岐親衛隊の言ったような新参とはとても思えない。

Flash職人「・・・・・・・・・・・・・ッ!!!!!!」

その場に満ちていく狂気と言えるほどに濃密な威圧感の圧迫に、耐え切れなくなった残ったFlash職人が銃を発砲した。
だがその銃弾はまるで存在しないかのように、幻であるかのようにその名無しを傷つけることなく、名無しの体を通り抜けていった。

「脳内NGにしてあるからそんなん撃っても意味ないよ。どれだけ煽られても脳みそで認識しなきゃ煽られて無いのといっしょ。」

相変わらず淡々と、事実だけをぼそぼそと述べるような名無しの発言。
今やこのスレ内は名無しの放つ威圧感に完全に支配されていた。

だがその中で大佐だけが平然とその名無しを睥睨し、しばらく何事か考えるしぐさを見せると、やがて口を開いた。

大佐「馬愚那か。久しいな。ちなみに今度のその顔は誰のなんだ?」

大佐の台詞にハッとしたように、僕のとなりの騎士さんが名無しを注視した。

騎士「馬愚那か。なるほどな。」

疑問を抱えたままの僕に騎士さんが説明してくれた。

騎士「馬愚那ってのは俺と同じで昔VIPに居たコテだ。もっとも、知名度じゃ俺にはかなわねーだろうがな。」

騎士さんは少し自慢げに言って続けた。

騎士「あいつは昔から顔を晒せと言われるたびにそこら辺から拾ってきた画像をうpしてたからな・・・。それにしても相変わらずの電波ぶりだ。」

僕は騎士さんのその説明に、この人はもう他のコテの解説しか役回りが無いんじゃないのか、と的外れな心配をしながら視線を馬愚那と呼ばれたコテに向けた。


馬愚那「誰かなんて知らないよ。適当にぐぐって見つけた画像だからね。」

そういうと共に名無しの容貌がまったく変わった。
少々陰鬱な印象がある、その容貌が彼の本来のものなのだろう。

馬愚那「しかし、こんな簡単に正体が僕だとわかるなんて大佐、てめぇも神ですか?」

馬愚那の淡々とした台詞からは本当にそう思っているのか、冗談で言っているのか全く読み取ることはできなかった。
その正体を現したことによって、スレの中の馬愚那の威圧感が濃さをました。

だが、それに対抗するかのように唐突に讃岐親衛隊が声を張り上げて言った。

讃岐親衛隊「馬愚那!!、今更VIPに何の用があって戻ってきた!!?とうの昔にVIPを捨てた貴様が!!!」

だがその叫びはやはり上ずっていた。

馬愚那「僕は自動的なんだよ。」

馬愚那が何かの台詞を引用するかのように芝居じみた口調で言った。
讃岐親衛隊やFlash職人、削除人達が意味を図りかねて首をかしげる。

馬愚那「なんだよ。てめぇ等『ブギーポップ』、読んだことねーのかよ。死ね。糞豚が。『僕はVIPの危機に自動的に浮かび上がってくるのさ』ってか。」

「本当にお前等はつまらん奴等だな」とでも言いたげな口調だった。
舌打ちとともに今まで変わらなかったその表情を少し歪ませるが、すぐに元の表情に戻して言った。

馬愚那「まあいい。てめぇ等神様かもしれんから言っとくよ。神様、ずっと会って言いたかったことがありました。」

馬愚那がその右手に握られた銃を構える。

馬愚那「義務を果せ。最後まで面倒が見れないなら最初から造るな。ばかやろー。」

圧倒的な狂気と殺気が馬愚那の銃口から漏れ出す。
だが讃岐親衛隊がその威圧感に逆らおうと再度声を張り上げた。

讃岐親衛隊「馬鹿が。普通の弾丸は放置できても、この数の削除人達の規制銃は放置しようがなんだろうが貴様を永遠にこのVIPから追放するぞ。一介のコテごときが調子にの―――」

だがその台詞は途中で途切れた。
讃岐親衛隊の胸の中心からすこし左にズレた部分、正確に心臓のある部分を騎士の剣が貫いていた。
僕は僕の隣から騎士さんが何時の間にか讃岐親衛隊の背後に移動していることに気付き、驚いた。
どうやら騎士さんははただの解説キャラに成り下がるわけではないようだ。



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