第一部 第二部 第三部 第四部 終章 後書 絵師 辞典 出口


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何時の間にか狙撃場所からここまで接近していたしぃはVコテの銃撃を避けて手近な物陰に隠れる。
だがしぃはVコテの銃撃がしぃの隠れる遮蔽物に突き刺さると共にそこから飛び出す。
この戦いの最初にしぃが見せた物と同じく、防御を一切考えない突撃だった。
スピードに任せて一直線に加速するその姿はまさに一陣の風だった。
しぃは疾走のまま銃を連射する。その狙いは明らかに適当なのだが、だんだんVコテに近づいていくに連れて狙いをつけるのが容易になっていき、銃弾はVコテに近づいていく。
だがVコテは焦らずに、しぃのその速さから見れば遅すぎるほどの動きで銃口をしぃに向ける。
Vコテの銃撃が先か、しぃの銃弾がVコテに狙いを合わせるのが先か、ギコは喉を鳴らした。
だがVコテは先の見えない勝負をするような男ではなかった。
仮にしぃを倒せても、まだ俺と戦わなければならないと考えたのだろう。
しぃを相手にしながらも俺への配慮を怠っていなかった。
Vコテはしぃの突進の直線上から飛んで逃れる。
しぃが両手の銃をVコテにの逃れた方向に修正しようとするが、Vコテがすれ違い様に両手のグレネードランチャーの銃身を叩きつけしぃの両手の銃の向きを自分から逸らす。
しぃは勢いのままなかなか止まれず、そのままVコテに背中を向けて走り、勢いを殺そうとする。

Vコテはしぃの背中に発砲しようとするが、視界の端に捕らえたギコの銃身が自分に向いている事を知り、その場から逃れた。
ギコはVコテが狙いをつける前にVコテの懐に飛び込み、Vコテの狙いをずらしつつ額に銃口をポイントしようとする。
だがVコテはその動きを読んでいて自分の懐の調度、ギコの頭が来るであろう位置にグレネードランチャーを突き出す。
ギコとVコテの腕が交差してお互いにお互いの頭に銃を向ける形になる。

次の瞬間、ギコの後頭部に鉄の塊が押し付けられる感触。
しぃが後ろからギコの後頭部に銃を突きつけていた。
完全に後ろを取っているにもかかわらずしぃが撃たなかったのは、ギコに向けているのと反対側の銃を握った手と、Vコテのグレネードランチャーを握ったもう一方の手が交差していたからだ。
そしてギコがゆっくりと、規制銃をにぎるのと逆の手に銃のAAをタイプして握りこませ、真後ろに居るしぃの腹に適当に押し付ける。

三人それぞれが自分以外の二人に銃を向け合う、いわゆる”三竦み”の状態だった。

まるで石になったかのようにギコとしぃは自分以外の二人に銃を突きつけつつ待ち続けていた。
この三竦みを打開するためのチャンスを、他の二人の隙を。
だがVコテは長い間じっとしているのが嫌いらしく、時々両手に握られたグレネードランチャーが小刻みに揺れる。
ギコとしぃはそのグレネードランチャーの揺れに合わせて何か行動を起こしてやろうかとも思ったが、分の悪い賭けなので止めた。
だが、この自分も死んでしまうかもしれない状況の中で、ギコは内心笑っていた。
正直言って、彼は先ほどの戦闘からVコテに勝つのはかなり難しいのではないかと考えていた。
もちろんギコは相手がどんなに手ごわかろうと、最終的には自分が勝利を掴むという気概で戦っていたが、単純な実力でVコテはギコが今まで相手にしてきたどんなコテやAAよりも強かった。
そして先ほどの戦闘で自分の速さが、Vコテのグレネードの破壊力と精密射撃の前では”まだまだ足りない”と感じていたしぃも同じ事を考えて居た。
これはまともに戦っては勝つのが難しい敵を葬る事が出来るかもしれないチャンスなのだと。

やがて会話で相手の隙を作ろうとギコの口が開く。

ギコ「お前等味方同士じゃないようだが、Vコテ、何故avexと戦うのなら俺達に銃を向ける。」

ギコが尋ねた。

しぃ「私はてっきりそこのモララーを殺したコテはあなたの仲間だと思ってたけど。」

Vコテが何か言うより早く、しぃが言った。

(・・・・・どうやらあの時、物陰から聞こえた発砲音はVコテがモララーを仕留めたものだったようだな。)

ギコがそう考えをめぐらすうちに、Vコテが口を開く。

Vコテ「俺の敵はavexじゃない。馴れ合いだ。」

その口調に怒りをたたえながらVコテはさらに続けた。

Vコテ「このVIPはもう駄目だ。だから俺は今の終わっちまったVIPは全部ぶっ壊す。ぶっ壊してから馴れ合いのないVIPを作る。」

ギコがVコテの目を見たとき、Vコテの目には言い様のない悲しみと怒り、そして自分以外の全てを敵視するような鋭い視線が篭っていた。

ギコ「どうする?このまま三人仲良く相打ちか?」

ギコが冗談めかして挑発する。

Vコテ「・・・・・」

Vコテは応えない。

ギコ「こうなったら西部劇でおなじみのアレしかねーな。三人いっぺんに銃を手放して、あとは早いもん勝ち。」

ギコは面白そうに言う。

ギコ「どうする?乗るか?」

そのまま、Vコテとしぃに突きつけた両手の規制銃と銃のAAを左右に軽く振って挑発する。

しぃ「お約束すぎるわね。でも、嫌いじゃないわ、そういうの。」

しぃが余裕に満ちた笑いで応える。
その表情にはスピード勝負なら負けないという自身が満ちていた。

Vコテ「面白いじゃねーか、馴れ合い大好きのノロマどもが俺に勝てるわけねーだろ。」

スピード勝負ならば分が悪いはずのVコテも笑いながら勝負にのった。

ギコ「合図代わりだ。コイツが地面に落ちたら一斉に銃を放す。文句無いな?」

ギコが記号をタイプしていきメダルのAAを作り上げる。
Vコテとしぃが依存はないとでも言う具合に頷く。

ギコ「じゃあ、スタートだ。」

ギコによって作り上げられたメダルのAAがVIPに書き込まれ、空中でAAとして実体化し、重力にしたがって落下していく。
三人の全身の筋肉が最速を作り上げるべく緊張しはじめる。


メダルの端が地面に触れた。


ギコが右手の規制銃と左手の銃を握った手を放す。
重力の法則にしたがって銃と規制銃が地面にお落下していく。


それとほぼ同時にしぃが両手の銃を手放す。
重力の法則にしたがってその両手の銃が地面に落下していく。


そして他の二人とほぼ同時にVコテのその両手のがグレネードランチャを――――




                    ――――手放さなかった





 

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