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遠くの物陰から銃声が聞こえたのを聞いてギコは不思議に思った。
だが、自分が狙われたわけでもないのでとりあえず銃を持つ何かが居るという事を意識にとどめておいて、考えるのをやめた。
しぃもモララーも物陰に隠れたのか、両者の姿は視認できなかった。
しぃはここから結構離れた場所から狙撃していたようなので、近づいてくるには時間がかかるだろうが、モララーの方はこうしている間にもなんらかの攻撃を仕掛けてきそうだった。
ギコはしぃの今までの狙撃から大まかにしぃの現在地を予測すると、それから隠れるように物陰伝いに移動し、現状を把握しようとした。
今までモララーやしぃとの戦いで周りがあまり見えていなかったが、ビーグルと遊撃隊たちの戦いは終結していた。
遊撃隊は二人を残して全員が死亡。
体中をビーグルにかまれてもなお戦い続けたのであろうと思わせる程、その死体にはビーグルの歯型が無数についていた。
たっている二人も目に宿る意志だけは鋼のようだが、体中から血を流していた。
今にも失血死しそうなのだが、それでも彼等は笑っていた。
まさに天に戦いを挑み続ける修羅の、羅刹の悪鬼の笑みだった。

だが、ビーグル達は全滅したわけではないようだ。
数匹がその場から逃げ出していくのを確認した。

ギコ(・・・・ビーグルは一匹でもその場を逃れればまたすぐにでもコピペで増えることが出来る。厄介だな。)

そこまで現状を把握したとき、彼の目に物陰から出てくる一つの影が映った。
それはどこかで見たことがあるコテだった。

ギコ(あれは確か・・・・・「VIPはコテハンが支えている」か?)

ギコは、彼の持つ規制銃を渡してくれた大佐と名乗る”協力者”に見せられたVIPコテ辞典を思い出していた。
大佐と名乗った男は「そこに載っているコテは力を貸してくれれば大きな戦力になる」とも言っていた。
確かに目の前のあの男はその辞典に載っていた。

VIP遊撃隊「Vコテ?」

VIP遊撃隊とVコテの全盛期とはあまり時期が合わないのだが、VIPコテ辞典等で彼等もVコテの事は知っていたのだろう、疑問とともに彼等はVコテに声をかけた。
だが、それに対するVコテの返答は、二発の銃声だった。

ギコはわが目を疑った。
対して狙いをつけたようにも見えなかったその榴弾は調度、遊撃隊達の上唇と鼻の間に突き刺さり、脳内に侵入、小脳を破壊し、一瞬で彼等を即死させた。
その銃撃により、彼等の頭は粉々に吹き飛んだ。いや、”吹き飛んだ”という表現すら生易しい程に、彼等の頭は粉々に燃え尽きながら弾けとび、その体は勢いで吹き飛んだ。
おそらく、自分たちに何が起こったかも把握できずに意識を失っただろう二人の遊撃隊が、まるで壊れた人形のように刀を手放し、吹き飛んだ勢いのまま手足を出鱈目に広げて地に伏せた。

Vコテの使っている銃は銃身を切り詰めたタイプのグレネードランチャーのようで、銃身の短い猟銃のようにも、アンティークなタイプの拳銃のようにも見える。
撃った瞬間、銃端を握るその腕が反動で大きく跳ね上がった。
その銃口から煙を吐き出しつつVコテが言った。

Vコテ「馴れ合ってんじゃねーぞ。糞ども。」

Vコテはそのまま、焦らずにゆっくりと、中折れ式のそのグレネードランチャーに一つずつ、器用に次の弾を込めていった。

ギコは反射的に怒鳴って物陰から飛び出していた。

ギコ「てめぇ!!!!avexに裏切りやがったのか!!!!!!!」

言うが早いがギコは規制銃をろくに狙いもつけずにVコテに発砲した。
Vコテは冷静にその銃口の延長線上から逃れつつ、右手グレネードランチャーを発砲、爆音とともにあっけない程の破壊力を持った榴弾がギコを狙う。
ギコはなんとか横と飛びにその銃弾をかわすが、グレネードのあまりの破壊力に吹き飛ばされかける。
体制を崩したギコに向けてVコテがさらに左のグレネードランチャーを発砲。
ギコはそのまま転がりつつもVコテにむけて狙いも定めずに規制銃を連射する。
が、当たらない。
Vコテは弾の無くなったグレネードを捨てると、一瞬のうちに新しいグレネードランチャーのAAをタイプして構築する。

Vコテ「裏切るだと・・・?・・・俺の敵は何時でも馴れ合いだけだ。」

そう言うと彼は跳ね起きて距離をとったギコに再び狙いを定めた。

今の攻防で、手数ではギコの方が多かったにもかかわらず、敵の二発のグレネードランチャーにギコは間違いなく押されていた。

(――――強いッッ!!!)

全てをあっけなく問答無用で吹き飛ばす圧倒的な火力。先ほどのモララー以上に厄介な相手だった。
そう感じた次の瞬間には彼は勝負に出ていた。
規制銃を連射しつつも体を左右に必要以上に動かしてVコテに特攻していった。
正確な狙いをつけさせずに特攻するつもりだった。

だが、Vコテの狙いの正確さは神業と言える境地にまで達していた。
大して狙いをつけたようにも思えないその銃弾が正確にギコの移動した位置に向かってくる。
連射に向いていないその銃身を切り詰めたグレネードランチャーを使うに当たり、破壊力と精密製だけを徹底的に極めた彼は完全に連射性の欠落を補っていた。

だがその程度でひるむようなギコではない。
タカラの買収騒動等、過去幾度も危機を乗り越えてきたギコの辞書に”怯む”などという単語は載っていない。
だが、彼はその場から飛びのいた。
しぃがの銃撃が彼の足元に突き刺さったからだ。

(糞!!!しぃが連射してくれば、コイツの連射性の無さは完全に克服されて、破壊力と精密性のアドバンテージだけが残る。モララーとの連携以上に厄介だ!!!)

だが次の瞬間、彼は当惑する事になる。
Vコテがその左手に握るグレネードしぃの方に向けて発砲したからだ。

(どういう事だ?奴等は仲間同士では無いのか・・・?)

考えてみれば先ほどギコを狙った銃撃も、Vコテに突撃して接近していたギコだけでなく、Vコテに当たる可能性もあったのだ。
さらによく思い出してみればしぃは、モララーとギコが接近戦を展開していた時は、味方に当たる可能性を考慮して狙撃はしていなかった。





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