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最初に触れたメダルの端と逆側の端も地面に落ちて、地面とメダルがぶつかる音が響く。
少し遅れて一丁の規制銃と三丁の拳銃が地面に音をたてて落下する。
その中でギコとしぃ、Vコテがまるで時が止まったかのように固まっていた。
それは一瞬の事だったが、彼等には永遠のようにも思えた。
ギコが”おいおい、そりゃあねえだろ”という顔でVコテを凝視していた。
しぃが口をあんぐりと開けて呆然とVコテを見ていた。
Vコテが”してやったり”という笑みを浮かべて自分以外の二人を見た。
Vコテ「じゃあな、間抜けども。」
Vコテが死刑宣告のように短く告げた。
・
だが、最も早く止まった時の中から動き出したのはVコテではなく、しぃだった。
Vコテの指が引き金を引くよりも早く後ろに倒れてポイントをずらす。
Vコテが慌てて照準を合わせようとするが間に合わない。
だがVコテの右手から発射されたグレネードランチャーのの擲弾が倒れていくしぃの右肩口にかすって、その圧倒的な勢いで霞めた肩の部分の肉を抉り取っていく。
だがしぃのその左手には落下したばかりの銃が拾い上げられ、握られていた。
その銃から放たれた銃弾が、Vコテが逆の手に握る、ギコに向けられたグレネードランチャーを弾き飛ばした。
「しぃッッッッッ!!!!!」
ギコは気付いた時には叫んでいた。
そして叫んだ時になってやっとギコは動いていた。
それと同時にVコテも動く。
ギコは落下音で自分の規制銃が何処に落ちたのか、目を向けていなくても大まかな場所は見当がついていた。
だがギコはその規制銃に飛びついて拾い上げながら、Vコテの足元にしぃの銃が落ちていて、Vコテがそれを拾う方がギコがギコ自身の周囲に落ちているどんな銃を拾うよりも早い事を知っていた。
ギコは銃弾を数発受ける事を覚悟してその銃をVコテに向けた。
何度銃弾を受けても、たとえそれで頭や心臓を打ち抜かれたとしてもこのまま条件反射的に引き金を引いてVコテを殺してやるつもりだった。
グレネードランチャーの榴弾を受けるよりはマシかと重いながらギコがVコテに狙いを定めようとした時、そこには手近なしぃの銃を拾わずに遠くへ転がったグレネードランチャーを拾い上げて狙いをつけようとしているVコテを発見した。
ギコはその事に驚いたが、その驚きで動きを鈍める程、彼は未熟ではなかった。
Vコテとギコの腕がお互いに狙いをつけようと動くのは同時だった。
・
次の瞬間、完全に狙いをつけたギコの規制銃によって、まだ狙いをつける寸前だったVコテの右腕を消し飛ばしていた。
Vコテの顔が規制銃によって綺麗に”削除”された自分の腕を”信じられない”とでもいうような表情で見ていた。
Vコテのその動きが完全に止まる。
致命的な一瞬だった。
ギコ「じゃあな、間抜け。」
ギコがその台詞と共に規制銃からさらなる弾丸を吐き出させた。
何かをなげこうと動いたVコテの口が、音を出す前に喉ごと顔を”削除”された。
Vコテの頭と右腕を無くしたVコテの体が、どっとその場に倒れこんだ。
ギコ「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ギコは考える。
何故Vコテは近くに転がるしぃの銃を拾わずに、あえて遠くのグレネードランチャーを拾おうとしたのか。
あのグレネードランチャーに何か思い入れがあったのだろうか。いや、あのグレネードランチャーは先ほどVコテがタイプして作ったAAだった。
グレネードランチャーのAA自体に思い入れがあったのだろうか。
ギコにはわからない。
・
ギコは肩が大きく抉れ、そこから血を吐き出し続けるしぃに近づいた。
しぃ「殺さないの?」
しぃが言った。
肩を砕かれたとはいえ致命傷とはいえない。
だが、その傷では今までのような戦い方はできないだろう。
その姿は戦闘者としては完全に”死に体”だった。
ギコ「俺がおまえを殺せるわけがないだろう。」
ギコがしぃのその傷に規制銃を向けて、傷口のあたりをすこし”削除”しながら苦々しげに呟いた。
治るのに時間はかかるだろうが、完全に消えて出血しなくなったため、失血死の可能性は無くなっただろう。
しぃ「山奥のしぃ先生ってAAスト−リー覚えてる?」
しぃが何かを観念した顔で静かに言った。
ギコは何も言わない。
・
しぃ「あのストーリーに出演してた頃はよかった。みんなと一緒にAAストーリーに出ること自体が楽しかった。
虐殺厨やしぃ厨達が荒らしあったり、辛いこともあったけど、色んなAAストーリーに出て色んな人がそれを見るのが純粋に嬉しかった。」
ギコは頷かない。
しぃ「ギコくんは居酒屋のおじさんとしてしか出られなかったけどね」
しぃがえへへと笑いながら言った。
ギコは笑わない。
しぃ「avexは地獄よ。モララー君は過労で壊れた。昔の彼があんな風じゃないことを知ってるでしょう?
ジョルジュ君はキャラクターや台詞があまりよくないからって捨てられた。でも権利を握られてるから2chに戻る事も出来ない」
しぃが目をつぶりながら何かを思い出すように言った。
ギコは目を閉じない。
ギコ「だからなんだ?疲れたからせめて最後は昔の知り合いに殺されようとでも思ったのか?」
ギコが感情の篭らない声で聞いた。
しぃ「・・・・・・・・・・・・」
しぃは答えなかった。
最初の特攻やVコテとの戦いで見せた動きのすべてが、”死を恐れない動き”では無く”死を望んでの動き”だと見抜かれていたからだ。
・
ギコ「止血はしてやった。後は好きにしろ。」
ギコがその場から立ち上がり、スレの出口へ向かっていった。
しぃ「ついて来いとは言ってくれないのね。」
しぃが悲しげに嘆いた。
ギコは振り返らない。
しぃは悲しげに側に落ちた自分の銃を見つめていた。
しぃはその銃を拾い上げて引き金に指をかける。
ギコはそれでも振り返らない。
ギコがそのままスレの出口に差し掛かったとき、銃声が聞こえた。
ついで、ドサリと何かが地面に倒れる音。
ギコは足を止めない。
その足元が、血ではない液体で濡れた。
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